P<sup>32</sup>の溶出率から見た各種固定法の autoradiography への適否について

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  • Preliminary Test of Fixatives and Other Fluids Used in Autoradiographic Technics in Histology

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説明

ラッテの腹腔内にP32 (Na2 HPO4) 0.5mcを注射し, 20時間後に腎, 肝, 心, 脳及び大腿四頭筋を摘出, 約40mgの小片とし, これらに含まれていたP32の, 固定-包埋操作の間に失われる量を, 表に示した7種の術式別に液浸カウンターで計測した. 各組織のそれそその1片を40%KOHで溶解したものゝカウント数を基準とし, 使用後の各被検液のカウント数をこれに対する100分率で表わし, P32の溶出率とする.<br>Orth 固定では何れの組織でも Schaudinn 及び susa 固定のものに比してP32の溶出が少く, また包埋までの時間の最も短い alcohol 及び Carony は常に他の固定液よりも良好であるが, それは時間が短いためよりも寧ろ固定液自身の能力に帰せられる. 水洗, 脱水を要しない alcohol を用いた場合は常に xylol 中におけるP32の溶出が認められるが, その率は最高6.9%を超えない程度である. 脳, 大腿四頭筋, 心筋では固定液中への溶出が多く, 肝, 腎では, absolute alcohol と Carnoy を用いた場合を除き, 脱水中の溶出が多い.<br>細胞組織内に入った放射性Pは非放射性Pと交代しつゝ燐脂質や核酸に結合するのであるから, P32の溶出率の高い固定法は, 特にDNAを検索するためには, 不適当であり, その意味で従来細胞核の固定液として用いられている absolute alcohol や Carnoy は良好な固定液であり, Bouin は核には不適当な固定液である. しかし absolute alcohol や Carnoy は細胞質の固定には適しないから, そのためには formalin-alcohol 混液又はOrth 液を使用すべきである. 何れの組織を用いても溶出量の高い Schaudinn 液や susa は, これらが昇汞を含んでいるために, 沃素処理を行わなければ黒色の沈澱を生じ, 写真判定上の誤りを来たすことと相俟って, radioautography を目的する場合には甚だ不適当な固定液である.

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