レイノー現象のひん発を契機とし,著明な高血圧と特発性乳酸アシドーシスを呈したこう原病重複症候群の1例

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タイトル別名
  • A CASE OF OVERLAP SYNDROME WITH IDIOPATHIC, LACTIC ACIDOSIS AND MARKED HYPERTENSION PRECEDED BY FREQUENT RAYNAUD'S PHENOMENON
  • レイノー ゲンショウ ノ ヒンパツ オ ケイキ ト シ チョメイ ナ コウケツ

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抄録

膠原病重複症候群で,レイノー現象頻発を契機に,高レニン血症を伴う,著明な高血圧と特発性乳酸アシドーシスを呈した症例を経験した.症例は26才,女性.主訴は関節痛と疼痛を伴う殿部の紅斑. 15才時にレイノー現象出現,その後関節痛,脱毛,手指硬化,指端潰瘍,筋力低下,深在性ループス皮疹,蛋白尿,無菌性骨壊死などが認められた.昭和54年3月入院後,主訴は改善傾向にあつたが,血圧は入院時120/80mmHgより徐々に上昇し, 7月始めには140/100mmHgとなつた.この頃よりレイノー現象が頻発し始め, 7月12日に突然,顔面蒼白,過呼吸,無尿,昏迷状態となつた.血圧170/140mmHg, PaO2 105 Torr, PaCO2 16 Torr, pH 7.06, anion gap 29.9mEq/l,動脈血乳酸濃度15.2mmol/l,ピルビン酸濃度0.18mmol/lであつた.この時血漿レニン活性6.2ng/ml/h,アルドステロン濃度1250pg/mlと著増していた. diazoxideおよびhydralazineにて血圧126/100mmHg, pH 7.36に改善したが, 10時間後に同様の発作を呈し死亡した.本例はレイノー現象による腎血管のれん縮と腎の血管病変のために,レニン,アンギオテンシンの産生が増加し,全身の血管がれん縮することによつて乳酸産生の増加と利用の低下をきたしたものと推察された.乳酸アシドーシスが膠原病に合併したという点において,また高レニン血症,高血圧に伴つて発症したという点において,本症例は国内外に例がない.

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