薬剤・抗体のimmune complexを証明したジギトキシンによる血小板減少症の1例

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  • A CASE OF THROMBOCYTOPENIA INDUCED BY DIGITOXIN-ANTIBODY IMMUNE COMLEX
  • ヤクザイ コウタイ ノ immune complex オ ショウメイシタ ジギ

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抄録

ジギトキシン服用中に血小板減少を来した症例において,ジギトキシン・抗体複合体(immune complex; IC)を証明し,その病態との関連を検討した.患者は, 62才,男性で,僧帽弁膜症により20年間ジギトキシン薬を断続的に服用していたが,入院1ヵ月前に心不全が増悪し,ジギトキシンを0.1~0.3mgとジゴキシン0.5~0.75mgを服用し,全身浮腫,起坐呼吸,鼻出血,前腕,背部の紫斑が出現し入院した.入院時,心電図は心房細動に加え,多源性心室性期外収縮を伴い,白視,飛蚊症の神経症状を伴うジギタリス中毒症状を呈していた.末梢血での赤血球数,白血球数は正常であつたが,血小板数は, 11000/mm3で,出血時間は約10分と延長していた.骨髄は有核細胞数,巨核球数ともに正常であり,また抗血小板抗体は陰性であつたが,ジギトキシン存在下での血餅退縮阻止試験は陽性で,ジギトキシンによる血小板減少症を疑つた.そこで,ジギトキシンと患者血清を反応させ,血小板を介した感作指示赤血球の凝集をみると陽性であつた.しかし,ジゴキシンでは陰性であつた.このことは,ジギトキシン・抗体のICが血小板に特異的に結合することを示し,本症例の血小板減少が,血小板への薬剤・抗体ICの関与する免疫学的機序によることが示された.さらに,血小板数が10万に回復した1ヵ月後にジゴキシンを維持的に投与したが,血小板の減少はみられず,本症例の血小板減少はジギトキシンに特異的であることが示された.

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