特発性起立性低血圧の1症例  特に循環動態,神経薬物的および生化学的検討

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タイトル別名
  • A CASE OF IDIOPATHIC ORTHOSTATIC HYPOTENSION, WITH SPECIAL REFERENCE TO CIRCULATORY, NEUROPHARMACOLOGICAL AND BIOCHEMICAL STUDIES
  • トクハツセイ キリツセイ テイ ケツアツ ノ 1 ショウレイ トクニ ジュンカ

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抄録

臨床的に自律神経障害のみを示した特発性起立性低血圧の1症例に,循環動態的検査,神経薬物学的および生化学的検査を行なつた.症例は59才の女性で,主訴は起立時の失神発作.現病歴は昭和51年春より,起立時,排尿時などに30秒から1分間続く失神発作を生じ,時に尿失禁があつた.痙攣はない.理学的所見:臥位から立体になると血圧は測定不能となる.他に中枢神経症状を含め異常なし.検査成績:尿,便,末梢血に異常なし.酵素,電解質に異常なし. (1)循環動態検査: (A) Valsalva試験: IV相のovershootを認めず,徐脈も起こらない. (B)起立試験:直立させると血圧は測定不能となり,橈骨動脈の脈拍は触れない. (C)寒冷昇圧試験:血圧の上昇はみられなかつた. (D)過呼吸試験:収縮期,拡張期血圧とも下降した. (2)神経薬物試験: (A)アドレナリン試験,フェニレフリン試験:両者で血圧は上昇した.前者で脈拍数の増加を,後者では不変だつた. (B)タイラミン試験:血圧の上昇はなかつた. (C)アトロピン試験:脈拍数の増加はなかつた. (D)アセチルコリン試験:発汗,立毛はなかつた. (3)生化学的検査: (A)血中ノルアドレナリンの著しい低下が見られ,立位やhand grip負荷でも上昇はなかつた. (B)レニン活性:臥位で低値で,立体でも上昇はなかつた.結論:以上より本例は交感神経遠心路,とくに終末部を含む節後線維に障害があることが証明された.また副交感神経も障害されていることが示唆された.

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