長野県長野市信更町,後期更新世高野層から採取したTKN2004コアの花粉分析

書誌事項

タイトル別名
  • Pollen analysis of the TKN2004 core from the late Pleistocene Takano Formation, central Japan
  • ナガノケン ナガノシシンコウチョウ,コウキ コウシン セイ コウノソウ カラ サイシュ シタ TKN2004 コア ノ カフン ブンセキ

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抄録

長野市信更町高野に分布する湖成の高野層で採取された長さ53.88mのボーリングコア試料(TKN2004)には21層の指標テフラが同定されており,同コア試料はMIS 6からMIS 3前半頃に対比されている.TKN2004コアの下半部では1,200年,上半部では500年間隔で花粉分析を行い,下位からI〜XII帯の12の地域花粉帯を設定した.I帯(158.0〜149.3ka),II帯(149.3〜141.4ka)およびIII帯(141.4〜130.2ka)の花粉組成から復元される古植生は,トウヒ属が優占する亜寒帯針葉樹林であり,その年代はMIS 6の氷期に対応する.IV帯(130.2〜117.4ka)の花粉組成は,ブナ属が優占する冷温帯落葉広葉樹林を示し,その年代はMIS 5eの最終間氷期にあたる.V帯(117.4〜107.1ka)では亜寒帯下部の,スギ属を伴い,マツ科が優占する針葉樹林が広がり,その年代はMIS 5dに相当する.VI帯(107.1〜98.8ka)の花粉組成からは冷温帯の針広混交林が復元され,その年代はMIS 5cに,VII帯(98.8〜85.6ka)の花粉組成からはマツ科針葉樹にスギ属とヒノキ科を伴う亜寒帯下部の植生が復元され,その年代はMIS 5bに,VIII帯(85.6〜75.6ka)の花粉組成からは冷温帯落葉広葉樹とスギ属,マツ属単維管束亜属からなる針広混交林が復元され,その年代はMIS 5aに,それぞれ対応する.IX帯(75.6〜60.9ka)の花粉組成からはトウヒ属の卓越する亜寒帯針葉樹林が復元され,その年代はMIS 4に相当する.X帯(60.9〜53.3ka)の花粉組成からはマツ属単維管束亜属の優勢な針葉樹林が,XI帯(53.3〜48.5ka)の花粉組成からはブナ属,コナラ亜属のやや優勢な針広混交林が,XII帯(48.5〜37.6ka)の花粉組成からはマツ属単維管束亜属とトウヒ属が優占する亜寒帯針葉樹林を多く伴う針広混交林が復元される.<BR>これらの結果から,中部地方の植生も汎地球的な気候変動に強く影響を受け,数千年程度よりも短い期間の気候変動にも応答して植生が変遷してきたことが再確認された.これらの花粉帯はこれまでよりも連続的で,かつ高い時間分解能をもち,指標テフラを鍵として,中部地方各地の花粉帯とも広い範囲で対比することができるので,有用な古気候資料となる.

収録刊行物

  • 第四紀研究

    第四紀研究 54 (2), 69-86, 2015-04-01

    日本第四紀学会

参考文献 (18)*注記

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