海面水温と日本の暖冬に関する数値実験

書誌事項

タイトル別名
  • A Numerical Experiment on Sea Surface Temperature Anomalies and Warm Winter in Japan

抄録

日本の暖冬•寒冬に重点を置いて,海面水温偏差の大気に対するインパクトを調べた。5層MRI•GCM-Iを用いて, perpetual January modeで一連の180日間積分を9例行ない,30日平均降水量,500mb高度,地表気温の主成分分析を行なった。<br>低緯度の降水量変動パターンは東西に細長い構造をしており,その正負偏差分布はコントロール•ランの海面水温並びに降水量分布に依存している。東アジアの地表気温は,日本から中国にかけての領域とオホーツク海との対照が特徴であり,これは北太平洋の高気圧偏差とシベリアからのコールド•サージの弱まりに対応している。この循環は500mb高度の第1主成分に現われ,かつ日本の暖冬時の合成海面水温(1972,73,79,83)を用いたランで卓越している。この時の環太平洋領域の循環場のアノマリーは観測と対応している。<br>この中緯度循環パターンはハワイの南方の降水量偏差と高相関があり,これは赤道上,口付変更線付近に海面水温偏差を与えた追加実験により確認される。これらの循環は低緯度熱源に対する直接の応答ではない。日本暖冬パターンは大気に固有のモードであることが示され,海面水温偏差によりこのパターンの出現頻度が高くなったと示唆される。線形モデルの範囲では,このパターンは亜熱帯の発散場に対する力学的応答として理解される。従って低緯度の海面水温偏差並びに熱源の日本暖冬パターンへの影響は直接的なものではなく,亜熱帯循環の変動を通じて実現される間接的なものである。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 66 (4), 515-533, 1988

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (7)*注記

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参考文献 (40)*注記

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