南極大陸で起こるエイトケン粒子濃度の急増現象について

書誌事項

タイトル別名
  • On the Sudden Increase in the Concentration of Aitken Particles in the Antarctic Atmosphere

抄録

1977年2月から1979年1月までの2年間,南極昭和基地(69°00'S,39°35'E)において,ポラックカウンターによるエイトケン粒子濃度と平均粒径の連続測定を行なった。ここでは,これらの観測期間中に見られた,エイトケン粒子濃度の急増現象について報告する。現象の特性をより詳細に理解するため,ミー粒子(直径0.3ミクロン以上)の濃度測定,エイトケン粒子の粒径分布や揮発特性の測定,電子顕微鏡による粒子の観察などの結果も一部に参照した。<br>昭和基地で観測されるエイトケン粒子濃度の増大現象は,基地活動による汚染を受けていると見なせる場合を除いて,2通りの型に大別できることがわかった。第一の型(タイプ1)は,増大する粒子が極めて小さく(主として直径0.01ミクロン以下),揮発性に富んでおり,主に夏季に出現するといった特徴を持つ。第二の型(タイプ2)は,常に暴風に伴って出現するもので,不揮発性粒子の濃度が,広い粒径範囲にわたって増加し,夏には比較的現れ方が少ないといった特徴を持つ。<br>電子顕微鏡による粒子の観察結果と合わせて考えると,タイプ1の現象から,夏の南極上空には,光化学反応でできた硫酸を組成とするエイトケン粒子が雲の様に浮かんでいる図が連想される。この粒子を地上にもたらす役をするのは,時折やってくる寒冷前面に沿った下降流であるかもしれない。タイプ2の現象は,低気圧系が南極大陸内部へ海洋性エーロゾルを輸送するのに重要な役目を果していることを示している。<br>今回の結果は,南極エーロゾルには大きく分けて2つの成分があって,その相対的な重要度が季節によって変るということを示すものであろう。つまり,冬季には低気圧系によって運ばれてくる海洋性エーロゾルが主体を占め,夏季には,気相反応によって生じるエーロゾルが主体を占めるのであろう。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 59 (2), 262-271, 1981

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (2)*注記

もっと見る

参考文献 (12)*注記

もっと見る

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ