西北部太平洋における低気圧の発達初期の診断研究

  • Kelly Robert W. P.
    Department of Atmospheric and Oceanic Sciences, McGill University Current affiliation: United Kingdom Meteorological Office
  • Gyakum John R.
    Department of Atmospheric and Oceanic Sciences, McGill University
  • Zhang Da-Lin
    Department of Atmospheric and Oceanic Sciences, McGill University
  • Roebber Paul J.
    Department of Atmospheric and Oceanic Sciences, McGill University Current affiliation: Department of Atmospheric Science, State University of New York at Albany

書誌事項

タイトル別名
  • A Diagnostic Study of the Early Phases of Sixteen Western North-Pacific Cyclones
  • 西北部太平洋における低気圧の発達初期の診断研究〔英文〕
  • セイホクブ タイヘイヨウ ニ オケル テイキアツ ノ ハッタツ ショキ ノ シ

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説明

本研究では、低気圧の爆発的な発達の実態を明らかにするために低気圧の発達期前の36時間について総観場の時間変化の事例解析を行なった。黒潮領域付近の5°緯度・経度グリッド内で急激に発達した低気圧(爆発的低気圧)8例について解析し、そのコンポジットを作成した。比較のために、同一領域で穏やかに発達した別の8例の低気圧についてもコンポジットを作成した。本研究で解析された事例の総数は寒候期9年分についての16例である。爆発的低気圧と穏やかに発達するものとでは、発達期前の36時間の総観場の力学的特性に顕著な差が見られた。<br>爆発的低気圧は日本の南方から西方で形成され、海洋上を東に移動してゆく。それに対し、穏やかに発達するものは本研究の解析領域で形成されるか、あるいは日本海から本州を通過して東に抜けることが多い。爆発的低気圧となる特徴的な熱力学的前兆として、東シナ海からその北東の黒潮領域へ移動する1000-500hPaの層厚の正のアノマリや本研究の解析領域の東側の層厚の負のアノマリとそれに付随する熱的ジェット気流、などがあげられる。層厚の正のアノマリの結果その北西部で強い南西温度風が形成され、そこの大気下層で初期の発達がみられる。<br>本研究では、下層での初期の発達が層厚の正のアノマリの北西で生じた爆発的低気圧の代表的なケースについて調べた。この発生領域には準地衡風的強制により上昇流が生じている。ここで発生した低気圧は、より発達しやすい環境にある北西寒帯ジェット下流の500hPa面の第2のトラフ域へと流れて行く。そして、この低気圧が強い傾圧性をしめす第2の寒気領域に移動して行くと、爆発的な気圧の低下が始まることを明らかにした。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 72 (4), 515-530, 1994

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (20)*注記

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