両性ポリアクリルアミドの構造制御と紙力性能

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  • リョウセイ ポリアクリルアミド ノ コウゾウ セイギョ ト シリョク セイノウ

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抄録

両性ポリアクリルアミド(PAM)系紙力剤は,紙の乾燥紙力を向上させるだけでなく,濾水性や搾水性の向上によるマシンの操業性改善,サイズ剤などの内添薬品や炭カルなどの填料の歩留り向上にも大きく寄与し,板紙から洋紙に至るまで幅広く用いられている製紙用薬品である。しかし,リサイクル古紙の使用比率の増大,抄紙機の大型高速化,抄紙用水のクローズド化の進展に伴う用水電気伝導度の上昇など,製紙用薬品の使用環境は悪化しており,これまでの両性PAM系紙力剤では十分な効果が得られ難い状況になっている。そのため,近年の厳しい条件下においても,効果の優れる両性PAM系紙力剤の開発が求められている。<BR>本稿では,PAMの分子鎖の広がり(回転半径),分子量,分岐度といったPAMの構造に着目し,両性PAM系紙力剤の高性能化の検討を行った。イオン基の量は同じで構造の異なる両性PAMをラジカル重合により合成した。得られた両性PAMの分子量・構造はGPC―MALS法により決定した。両性PAMの分岐度を高めることで溶液粘度を高めることなく高分子量の両性PAMを得ることが可能であった。得られた両性PAMを用い手抄き評価を行った。その結果,分子鎖の広がりを大きくすることで濾水性が向上すること。分岐度および分子量を高めることでパルプへの定着・紙力が向上すること。高分岐構造の両性PAMは高塩濃度条件でもイオン性基は遮蔽効果を受け難く,パルプの定着に必要なイオン性を保持できることが確認できた。高分岐化・高分子量化・分子鎖の広がりが大きな両性PAMは,紙力剤として優れた性能を有することが確認できた。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 67 (5), 538-543, 2013

    紙パルプ技術協会

参考文献 (11)*注記

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