パルプ配合によるコンクリートの耐凍害性の改善

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タイトル別名
  • Improvement of Frost Resistance of Concrete by Pulp Addition
  • パルプ ハイゴウ ニ ヨル コンクリート ノ タイトウガイセイ ノ カイゼン

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抄録

火力発電所では,燃料である石炭の燃焼により大量の石炭灰が発生する。昨今の景気低迷に伴いセメント会社の石炭灰引取り量が減少したことに加え,東日本大震災以降の火力発電所稼働率上昇により石炭灰発生量は増加している。そのため,石炭灰の有効利用技術の開発は喫緊の課題となっている。<BR>石炭灰のうちフライアッシュ(以下FA)をコンクリートに配合し,有効利用することは従来から行われている。しかし,FAを高配合化すると強度や耐久性が低下する問題がある。このため,FAを配合した一般的なコンクリートのFA配合率は15重量%(FA置換率15%)程度であり,最大でも30%とされている。<BR>建築材料に植物繊維を配合する技術として,古くから土壁に藁を配合する技術がある。藁は土壁において壁の補強,亀裂防止,曲げ強度を向上させる効果がある。そこでコンクリートにパルプを配合することにより同様の効果が期待できると考えた。<BR>本検討では,パルプ配合によりFA高配合コンクリート(FA置換率60%)における強度,および耐久性の低下の改善を試みた。強度の材齢による変化の観察,および耐久性の指標として凍害(コンクリート中の水分が凍結・融解を繰り返すことにより表面に剥離やひび割れが引き起こる現象)に対する耐性試験を行った。<BR>その結果,パルプを配合することで,強度は実用化に耐えうるレベルに到達し,耐凍害性は飛躍的に改善した。これは,パルプ繊維の配合が,FAとセメントの密度差に起因する分離を抑制したことが一つの要因であると推察した。また耐凍害性は,パルプ繊維の中空構造による凍結融解時の損傷の低減の結果,改善されたと予想された。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 68 (4), 380-384, 2014

    紙パルプ技術協会

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