プロセスのトータルチューニングによる装置安定化―オペレータのスキルアップによる総合的な取り組みについて―

  • 藤井 憲三
    出光興産株式会社 製造部 石油技術センター

書誌事項

タイトル別名
  • A Practical Total PID Tuning Approach for Chemical Process
  • プロセス ノ トータルチューニング ニ ヨル ソウチ アンテイカ オペレータ ノ スキルアップ ニ ヨル ソウゴウテキ ナ トリクミ ニ ツイテ
  • ―オペレータのスキルアップによる総合的な取り組みについて―

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抄録

装置の安定化は,運転の効率化,生産性の向上,品質の均質化,安全性の確保に がり,装置産業にとって重要な要素である。プロセス産業の運転の根幹を占めているプロセス制御技術は,社会環境の変化や技術進展に伴い急速に高度化している。このような状況下で,高度制御と呼ばれるモデル予測制御手法が大型プロセスを中心に導入されている。導入と同時に制御の基本であるPID制御は高度化と密接に関係した技術としてその重要性が見直されている。また,直接導入対象の装置ではないが制御のレベルを向上させたいと言ったニーズが高まっている。筆者らはこのような観点から,PIDパラメータのリチューニング問題を明らかにし,装置を安定化させる目的で近年活発に取り組んでいる。その結果PID制御の制御性能が向上し,プロセスの運転に費やすオペレータ負荷の低減や装置のパフォーマンス向上の具体的な例が現場から報告され始めている。一方,この様な制御技術に対し,DCS更新時のタイミングで新たに,制御ループの見直しを行い新たな技術基準を用いて設計することにより,制御の性能や安定性を大きく改善するアプローチを開始している。このリエンジニアリングの具体的な内容は,全ての制御ループの制御ループの健全性(位相特性)を見直し,最適に設計することである。また,チューニングに際しては,数多くのループを所定の期間に実施しなければならない為に,迅速に実施する必要がある。そこで,チューニングを2つのステージに分けて迅速かつ正確に実施する手法を開発し,実際にスチレン装置(以下,SM装置)に適用し,通常のPIDパラメータ同定方式の手法に比べ,数倍の速度でチューニングできることを検証した。また,DCSの更新時と合わせて実施することにより,10%のループ数の設計変更も平行して実施できた。このようなアプローチにより,単純更新であったDCSに安定化(省力化)と省エネの付加価値を付与することができ,低コスト,高性能型の手法の有効性が確認できた。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 65 (3), 222-226, 2011

    紙パルプ技術協会

参考文献 (2)*注記

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