山梨県におけるブドウ生育適地図の作成

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タイトル別名
  • Computerized Soil Information System for Arable Land in Japan. (Part 4) The Suitability Maps for Grape Cultivation in Yamanashi Prefecture
  • ヤマナシケン ニ オケル ブドウ セイイク テキチズ ノ サクセイ

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抄録

コンピュータなどを利用した土壌資源に関する"データバンク"ともいえる土壌情報システムを使って実用土壌図をつくる一例として,山梨県全域におけるブドウ生育適地図の試作を行うと同時に作成した図の妥当性チェックを行った。1)笛吹川上流地域をモデル地域にし,モデル地域内の各土壌調査地点ごとにブドウの生育適性と立地条件,土壌の性質とのリストをつくり数量化理論第II類によるコンピュータ解析を行った。2)モデル地域の統計解析により,(1)土壌条件からみたブドウの生育適性が8項目の説明変数でかなりよく区分できること。(2)適地と普通とを区分する要因は土性とリン酸吸収係数であること,すなわち土壌からみた"ブドウの生育適地条件"は土性が強粘質でリン酸吸収係数700以下であること。(3)ブドウ生育不適の条件は,土壌的要因よりもむしろ標高が高い(700m以上)ことや急斜面といった立地的要因が強くきいていること,などが明らかとなった。3)ブドウの生育適性に関する地下水位の影響については,モデル地域に地下水位の浅い土壌が出現しなかったため統計解析できなかった。そこで水越らによる試験データを引用し,これに統計解析結果を加えて土壌的にみたブドウの生育適性評価の一般化を次のように行った。(1)地下水位が30cmより浅い土壌はCランク(不適)土壌とする。(2)地下水位が30cmより深い土壌については,土性とリン酸吸収係数による評点を行い,その合計点の高いものをAランク(適地)土壌とし,低いものをBランク(普通)土壌とする。4)モデル地域での聞き取り調査により,ブドウの生育適地判定には気象条件が大きく関与していることが明らかになった。すなわちこの地域におけるブドウの好適条件は年平均気温12℃以上であり,年降水量が少なく,夏期(7月〜9月)の気温の日較差が大きいことなどである。5)図式情報ファイルに入力されている地力保全調査事業による土壌図をもとに上述の土壌条件と気象条件とを組合わせてオーバーレイを行い,最終的に最適地,適地,普通,不適地の4つの適地カテゴリーからなるブドウ生育適地図を5万分の1地形図上にインクジェットプロッタで出力した。6)作成した適地図の妥当性をチェックするため5万分の1地形図「甲府」図幅を使ってメッシュ法でカラー空中写真の実体視判読によって,各適地カテゴリーごとの実際のブドウ栽培面積を計測して,カテゴリー間の比較を行ったところ,最適地と適地,普通,不適地との間に大きな差が認められ,作成した図の妥当性が確かめられた。

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