作物による土壌カリウムの収奪とケイ酸の可溶化 : 長期三要素試験圃場からの推察

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of Potassium Uptake by Crops on Potassium and Silicate in the Soil : An Inference from a Long-Term Field Experiment
  • サクモツ ニ ヨル ドジョウ カリウム ノ シュウダツ ト ケイサン ノ カヨウカ チョウキ 3 ヨウソ シケン ホジョウ カラ ノ スイサツ

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説明

前報のポット試験では,カリウム供給量が少ない土壌から吸収するカリウム量には作物間差があり,カリウム吸収量が多い作物の跡地土壌には易溶性ケイ酸が蓄積する,あるいは作物によってケイ酸が吸収されることが確認された.これは作物がいわゆる`非可給態カリウム'を吸収し,土壌ケイ酸を可溶化したためであると考えた.この仮説を証明するために,1976年から8作物について三要素試験を行っている圃場(褐色火山性土,SL)の0区,-K区とNPK区を検証したところ,次のことが確認できた.1)作物間でカリウム吸収力に違いがみられた.すなわち,ジャガイモ(男爵)はカリウム吸収力が著しく弱く,トウモロコシとテンサイはカリウム吸収力が強いことが確認された.2)無栽植区と比べて3試験区(0区,-K区,NPK区)の作土の非可給態カリウム量が減少した.3)無栽植区に対して0区では土壌の易溶性ケイ酸量はわずかに増加し,-K区とNPK区では減少した.しかし-K区とNPK区において,易溶性ケイ酸の減少量よりも作物のケイ酸吸収量がはるかに多いことから,作物は土壌から難溶性ケイ酸を可溶化し吸収したと考えられる.4)作土から減少した非可給態カリウム量と作物が吸収したカリウム量は0区より-K区で多かった.-K区で一部不明分がみられたが,非可給態カリウムの減少量と作物のカリウム吸収量は対応していることから,作物は非可給態カリウムを利用したと考えられる.また,ケイ酸吸収量も0区より-K区で多かった.ケイ酸吸収量は作物が土壌から可溶化したケイ酸量と考えられることから,作物のカリウム吸収と非可給態カリウムの減少および土壌ケイ酸の可溶化には関連がみられた.5)NPK区においてカリウムの施肥効率は約80%と算出された.これは24年間に施用されたカリウムの約20%(約500kg K ha^-l)が溶脱したことを示す.

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