水稲品種「IR8」を用いたカドミウム汚染水田における土壌浄化
書誌事項
- タイトル別名
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- Phytoextraction with rice cultivar IR8 in a cadmium-contaminated paddy field
- スイトウ ヒンシュ 「 IR8 」 オ モチイタ カドミウム オセン スイデン ニ オケル ドジョウ ジョウカ
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抄録
Cd濃度に偏りのある中粗粒グライ土(0.1mol L^<-1>塩酸抽出Cd濃度の平均値0.40mg kg^<-1>)の水田圃場において,IR8を中干し以降節水管理条件で4年連続栽培し,そのCd低減効果と作業コストを検討し,以下の結果を得た.1)IR8のCd吸収量は,初年目に13.0mg m^<-2>と最も高く,その後,経年的に減少し,4年間合計で36.8mg m^<-2>であった.2)作土中の0.1mol L^<-1>塩酸抽出Cd濃度は,経年的に減少する傾向を示し,IR8栽培4作後には平均で0.22mg kg^<-1>と約45%低減した.また,圃場内の作土のCd濃度変動係数が低減し,Cd濃度の不均一性も改善された.3)圃場内各地点の0.1mol L^<-1>塩酸抽出Cd濃度とIR8のCd吸収量との間には,試験期間を通じて正の相関関係が認められた.4)IR8栽培2作目から圃場内でスポット的に栽培したコシヒカリの玄米中Cd濃度の平均値は,2作目では0.44mg kg^<-1>だったが,IR8栽培4作後には0.22mg kg^<-1>まで低下し,また,0.40mg kg^<-1>を超過する確率も0.01%と極めて低くなると試算された.5)以上により,本圃場ではIR8による4年間のファイトエキストラクションによって,翌年コシヒカリを節水栽培しても,玄米中Cd濃度を基準値以下に抑制できることが示された.6)IR8栽培期間中の節水管理が確実に実施された条件下であれば,スポット植食用米品種の玄米中Cd濃度が,浄化終了を判断するための最も有用な指標となり得ると考えられた.また,IR8のCd吸収量も指標として活用できると考えられた.7)IR8の回収率は,収穫作業にホールクロップコンバインを用いた場合は71%程度であったが,自脱型コンバインと自走式ロールベーラーを組合せてワラと籾を分別収穫することにより約78%まで向上し,自脱型コンバインとロールベーラーを一体とした試作収穫機においては約95%まで向上した.8)浄化4作に係る経費は約12,000千円ha^<-1>と試算され,現行の客土工法より安価になる可能性が示された.ただし,浄化効果の確認や浄化後の土壌改良資材の施用に必要な経費の算入,ならびに浄化効果の持続性の確認等については,今後,更なる検討が必要である.
収録刊行物
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- 日本土壌肥料学雑誌
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日本土壌肥料学雑誌 83 (5), 546-554, 2012
一般社団法人 日本土壌肥料学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282681535404160
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- NII論文ID
- 110009593762
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- NII書誌ID
- AN00195767
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- ISSN
- 24240583
- 00290610
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- NDL書誌ID
- 024035703
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可