底棲プランクトン採集器「そりネット」

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タイトル別名
  • A Bottom-Net to collect Zooplankton Living Close to the Sea-Floor

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説明

一般にプランクトンといえば普通のネットで採集できる生物, すなわち表層からある程度の深さまでの水中にみられる群と考えるが, プランクトンには海底に非常に接近したところに棲息しているものがかなりある. しかし, 採集の困難さのためにそれら海底直上にみられるプランクトン-ここでは底棲プランクトンと呼ぶ-ついての研究は今日までほとんど行なわれておらず, そこには果してどのような生物群がみられるのか, またその量は表層や中層のそれと較べてどの位のものであるのかなど不明の点が多い. 底棲プランクトン群の構成には昼夜によって大きい変動があるものと思われる. 海底近くには常にそこにのみ見られる生物のほかに, クーマ類, 端脚類の一部に知られるように夜間泥中から水中に現われるものや, 逆にある種のカイアシ類やアミ類で観察されているように夜間は中層に分布するが昼間は海底近くに下降するものがある. これらの生物の相互関係およびこれらが海の食物連鎖の中で果す役割, 殊に底棲魚類との関連は興味ある研究課題である. 底棲プランクトンの採集は, また有用貝類やイセエビ, シャコなどの水産生物の生活史の究明に大きく貢献することが期待されるばかりでなく, 分類学上貴重な種類が数多く発見される可能性があることはいうまでもない.<BR>ここに報告した「そりネット」は, 淡青丸で採集試験を繰り返し, 改良を加えて, 一応水深200m以浅の平坦な海底上の底棲プランクトンの採集が容易にできるようになったものである. 相模湾と駿河湾との採集標本は現在査定中であるが, 既にアミ類やエビ類にいくつかの新種が発見されたほか, くしクラゲや毛顎類で昼間は中層よりむしろ海底直上に濃密に分布するものがあることがわかった.

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