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- 平 啓介
- Ocean Research Institute University of Tokyo
書誌事項
- タイトル別名
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- A Field Study of the Development of Wind-waves
- 第1部観測結果
- Part 1. The Experiment
抄録
冬季の季節風の吹き出しによって, 平均水深420cm, 吹走距離12kmの霞ケ浦で急速に成長した風波の観測結果について報告する。測定は湖岸から10mの水深80cmの地点で行なった。波の運動量フラックス, すなわち, 波の運動量の時間微分を有義波とスペクトル密度とを用いて評価した。二つの方法はほぼ等しい値を与え, 風から水に与えられる運動量フラックスの5~7%が波として残ることが明らかにされた。一つの周波数成分のスペクトル密度の成長を, SNYDER and Cox (1966), その他が報告した指数関数的成長率と比較した。我々の測定値はこれらの値と一致している。従来の風波の成長理論で想定されているように, 指数関数的成長率ですべての成分波が成長すると, 風波の運動量フラックスは風からのフラックスを上まわることになり, 観測値を説明できないだけでなく, 物理学的にも不合理であることが示された。吹送時間の経過に伴うスペクトル密度の増減を調べた。スペクトル密度の増加は, いくつかの周波数帯に限られていることがわかった。このことはBARNETT and SUTHERLAND (1969) の報告した風波のスペクトルの“overshoot”現象と関連している。ある周波数帯のエネルギーの増大と他の周波数帯のエネルギーの減少とが関連しあっていることを, 観測結果は示している。従来のPHILLIPS, MILES, その他による風波の発生と成長の理論では, 周波数成分間のエネルギーの交換は考慮されていない。LONGUET-HIGGINS (1969) の波の成長についての新しい理論と今回の観測値とを比較した。その結果, 急速な成長過程において観測されたスペクトル密度∅ (f) が, 吹走時間護の関数として:∅(f) ={γ(f)・(t-tf)}2の形で表現されることが示された。ここでtfは周波数によって急速な成長の開始時刻が異なることを示している. LONGUET-HIGGINSの理論は, 風波のスペクトル密度の時間変化に特有のovershoot現象を説明することができない。スペクトル密度が増加する周波数帯の分布を特長づける3つの周波数を選ぶと, これら3つの周波数に対応する成分波は, いわゆる“wave-wave interactions”の共鳴条件を満足していることが示された。この非線型相互作用はPHILLIPS (1960), LONGUET-HIGGINS (1962), BENNEY (1962) らによって理論的に駅究され, 実験的にも確かめられている。急速な成長過程で風波のスペクトル密度が吹走時間の2乗に比例すること, 平衡に達した後振動すること等が, “wave-wave interations”の結果として説明できる可能性をこの論文で述べた。
収録刊行物
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- 日本海洋学会誌
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日本海洋学会誌 28 (5), 187-202, 1972
日本海洋学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282681542634624
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- NII論文ID
- 130006313603
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- ISSN
- 21863113
- 1573868X
- 00298131
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可