ZOOMを用いたフィールドワークの試みとその可能性

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  • Testing zoom in fieldwork and other potential applications

抄録

<p>1.はじめに</p><p>常磐大学総合政策学部総合政策学科(茨城県水戸市)において,これまでゼミナールにおけるフィールドワーク,地域連携活動は行ってきたものの,学科において地域の実態を共有する,意見を交換する科目や機会がなかった。そこで2019年度より新たな取り組みとして,本学科開設科目である「観光ビジネス実務総論」,「公共政策」,「まちづくり論」の3科目の授業において合同でまちづくりの現場を視察・調査し,受講生の政策に関する総合的な見聞を深めることを目的としたフィールドワークを展開することとなった。本発表では,本学科で行った試行的なフィールドワークの実態を報告するとともに,フィールドワークにおいてZOOMを使用することの可能性について検討する。</p><p> </p><p>2.授業の連携による合同フィールドワークの試み</p><p>1)3科目の担当教員は,それぞれの担当の時間では通常講義を展開しており,3回の授業において合同でフィールドワークを行う事とした。今回は各授業の担当者がそれぞれ大子町(旧上岡小学校と大子町商店街),小美玉市(茨城空港と空のえき そ・ら・ら),水戸市(水戸市役所と茨城県庁)を担当し,リレー方式で基礎的な実習を行った。各授業において受講生の数は異なるものの各回約100人が参加することとなったため,フィールドワークの際はバス2台によって移動することとなった。それぞれ回において拠点を設け,観察,聴講,聞き取り調査といったフィールドワークの基礎を学ぶ機会とした。また,大学,教員間の情報交換が密になるようZOOMを用いることとした。</p><p>2)ZOOMとは,ZOOM アカデミージャパンによれば,パソコンやスマートフォンを使い,セミナーやミーティングをオンラインで開催するために開発されたアプリとされる。使用する器材は①ウェブカメラ,②マイク,③スピーカーであるが,バスなどの車内で利用する場合には,スマートフォンと携帯用スピーカーがあれば簡便に利用することが可能となっている。</p><p>本学科においては,学芸員取得の授業において,これまでZOOMを用いた展開を試みてきた。一方,教員間の都合により会議の調整が困難な状況がみられたことから,学科会議等での導入を試みるために,これまで数回の講習会を行ってきた。</p><p>3.ZOOMの利用とその課題</p><p>1)2台のバスにおいて,各1名,拠点である大学において1名が約5時間,ZOOMを起動したまま調査実習を行った。今回の実習では,ZOOM使用時において電波状況,音声と画像の送信などの課題は残るものの,概ね順調であった。</p><p>2)説明者は,スマートフォン-スピーカーを通して,説明者が同乗していないバスや拠点である大学にも説明が届くため,車外の景観や土地利用,対象の建造物などに意識を向けやすくなった。また,スピーカーを通して教員同士が車外の景観や土地利用に対して意見を交換できること,そのやり取りが学生たちに届くためバスの同乗者次第であった移動時の車内の時間においても多角的な視野を持って観察,意見交換ががしやすくなったと考える。特に,専門が異なる教員が同行する場合,車外の景観に対する捉え方が異なる場合も多々みられ,その際のやり取りは学生には興味深く映ったようである。一方,拠点にいた教員からは,説明者が,スマートフォンのカメラを車外に向けることによって音声だけでなく,どのような場所において,どのような対象に視点をおき,どのように捉えているかが理解できたとの意見を聞くことができた。</p><p>3)フィールドワークにおいてZOOMがWeb会議のアプリケーションとしての役割を果たしただけでなく,車外の景観,実習の様子の記録が可能になったこと,あるいは実習の振り返り,確認のツールとして有効的であることが明らかになった。</p><p>4.おわりに</p><p> 今回,本学科の授業においてZOOMを用いたフィールドワークを試行した。学生たちの現場における調査方法に課題は残るが,ZOOMが有効的なツールである事は確認できた。今回は教員間のみのツールとして活用したが,事前にZOOMを教員だけでなく,学生にもスマートフォンにダウンロードしてもらうことで,調査地における教員の見方・捉え方 を共有できるのではないかと考える。一方,ZOOMは移動を伴うフィールドワークにおいてその可能性を見ることができたため,大学にとどまらず,今後小中高のフィールドワーク,教員研修などにおいても活用できるのではないかと考える。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282752329017344
  • NII論文ID
    130007710933
  • DOI
    10.14866/ajg.2019a.0_169
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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