書誌事項
- タイトル別名
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- Biology of three <i>Harpalus</i> species (Coleoptera: Carabidae)—Flight muscle polymorphism, feeding habits and reproductive phenology
- オサムシ科ゴモクムシ属3種(Coleoptera: Carabidae)の生態 : 飛翔筋多型と食性,繁殖様式
- オサムシカ ゴモクムシゾク 3シュ(Coleoptera: Carabidae)ノ セイタイ : ヒショウキン タケイ ト ショクセイ,ハンショク ヨウシキ
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説明
<p>オサムシ科の飛翔する種として,空中トラップ(マレーズトラップと衝突板トラップ)で捕獲したケウスゴモクムシとオオズケゴモクムシ,コゴモクムシの生態的形質を比較した.本研究は,空中トラップとピットフォールトラップを用いて個体数の季節消長や前翅長・体長に対する相対後翅長を調査した.さらに,生殖器官や飛翔筋の季節毎の状態および食性を解剖により明らかにした.</p><p>ゴモクムシ属3種はともに初夏から出現し,9月中旬以降に性成熟する秋繁殖の種で大卵少産型だと推定された.コゴモクムシはケウスゴモクムシやオオズケゴモクムシと異なり,空中トラップでの捕獲数はわずかで,逆に,ピットフォールトラップでは多く,その飛翔性は低いと推定された.後翅は3種とも長翅型だったが,前翅および体長に対する相対後翅長はともにケウスゴモクムシで最大で,次いでオオズケゴモクムシで高く,コゴモクムシでは両方とも低かった.これらは実際の飛翔性と同様の結果だったことより,相対後翅長が飛翔性の重要なパラメーターとなり得ることを示している.飛翔筋の保持率は,飛翔性と同様にケウスゴモクムシとオオズケゴモクムシで高く,コゴモクムシでは低かった.コゴモクムシには飛翔しない個体,すなわち生活史全期間において飛翔筋を持たない個体が存在する可能性がある.3種ともに,飛翔筋多型性で,性成熟後は飛翔筋保持率が低下したことから,生活史の前半に保持していた飛翔筋を後半は溶解させて繁殖に投資するものと考えられる.</p><p>3種ともに,主な餌は種子であるが節足動物も一部捕食していることが解剖によりわかった.ただし,肉食への依存性はコゴモクムシが他の2種に比べて高かった.存在の不確実性という点で,偏在する草本植物の種子の確保には飛翔探索の必要があり,3種は飛翔能力の差はあるものの飛翔することから,飛翔能力と食性の関係が示唆された.本研究では,ゴモクムシ属3種の飛翔筋多型,さらに,飛翔性と食性,繁殖様式との関係の糸口を提示した.オサムシ科は,個体群内あるいは個体群間での多型の維持機構や移動分散の進化の解明など,多くの進化生態学に関する研究材料の宝庫といえよう.</p>
収録刊行物
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- 昆蟲.ニューシリーズ
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昆蟲.ニューシリーズ 20 (4), 167-182, 2017-10-05
一般社団法人 日本昆虫学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282752342676224
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- NII論文ID
- 130007723941
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- NII書誌ID
- AA11248127
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- ISSN
- 24320269
- 13438794
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- NDL書誌ID
- 028759363
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDLサーチ
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可