昆虫学の最近の進歩と今後の展開 生理学と行動学

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  • Recent developments and future perspectives in entomology: physiology and ethology
  • コンチュウガク ノ サイキン ノ シンポ ト コンゴ ノ テンカイ セイリガク ト コウドウガク

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抄録

<p>本稿では,石井象二郎(編)『昆虫学最近の進歩』が刊行された1981年以降の昆虫の生理学と行動学の進歩を,内分泌学と生物時計,季節適応分野について,とくに日本人が関与してきた研究を選んで紹介し,今後の展開についての期待を述べる.この時期,生理学に著しい進歩がもたらされた大きな要因の一つは,分子レベルの技術の発展である.一方,行動学については,かつて「種にとっての意味」で説明されていた行動の進化が,遺伝子淘汰の考え方で説明されるようになったことが大きな変化である.日本では,“Selfish Gene”と“Sociobiology: The New Synthesis”の邦訳が1980年代に出版されたことが,その契機となった.今後,ゲノム編集など,さらに新しい分子レベルの技術が生理学や行動学に適用されることにより,これらの学問はさらに発展するに違いない.しかし,その発展にともなって深くメカニズムを追究する分野と生態的意義を明らかにする分野が乖離することが危惧される.昆虫を対象とするあらゆる学問分野を包括する日本昆虫学会には,このような乖離を防ぎ,異なる学問分野間の対話を促す役割を期待したい.</p>

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