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- 西澤 篤志
- 名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構
書誌事項
- タイトル別名
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- Probing for the Origin of Binary Black Holes with Next-Generation Gravitational-Wave Observations
- 最近の研究から 次世代重力波観測によるブラックホール連星の起源の検証
- サイキン ノ ケンキュウ カラ ジセダイ ジュウリョクハ カンソク ニ ヨル ブラックホールレンセイ ノ キゲン ノ ケンショウ
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抄録
<p>2015年9月14日,アメリカの重力波検出器LIGOがブラックホール連星からの重力波(GW150914)の初検出に成功した.そして,同年12月には,LIGO検出器は再び,別のブラックホール連星からの重力波(GW151226)を検出した.これらの観測から分かったことは,(1)重力波は確かに存在し,その性質に関しては一般相対性理論の予言と矛盾しない,(2)宇宙にはブラックホールが本当に存在し,連星を形成しているものもある,(3)2つのブラックホールが合体し,新しく1つの大きなブラックホールが形成された.以上のことは,研究者が想定していた事実であったが,ブラックホールの質量に関しては驚きの発見があった.これまでX線望遠鏡による観測で間接的に見積もられていたブラックホール候補天体の質量は10太陽質量前後であったが,今回のイベントGW150914では30太陽質量程度の2つのブラックホールが合体し,60太陽質量程度のブラックホールが形成されたのである.つまり,今回見つかったブラックホールは多くの理論予想よりずっと重かったのである.</p><p>2016年2月の重力波初検出の発表直後から,ブラックホール連星の形成シナリオについては活発に議論がなされているが,星進化の理論から,GW150914のブラックホール連星は金属元素の割と少ない場所で作られた可能性が高いと考えられている.金属元素が多い場合にはブラックホールの質量は10太陽質量程度になってしまい,30太陽質量程度のブラックホールを形成するのが難しいからである.重力波によるブラックホール連星の観測例はまだ2つしかなく,統計的に結論を導き出せる段階ではないが,現時点での観測事実から様々な形成シナリオが提案されている.ブラックホール連星の起源として標準的なものは大きく分けて2つある.1つは,孤立した連星系として,星進化の標準的な過程を経て形成されるものである.もう1つは,星が密集した星団の中での多体相互作用を通して形成され,星団の外に弾き出されたものである.その他にも,初期宇宙で形成された原始ブラックホールを起源とする説も提唱されており,現在の観測とは矛盾しない.</p><p>重力波の将来観測によりこれらの諸説を区別するためには,連星軌道パラメータ(質量,自転,軌道離心率)の分布や連星の空間分布(距離依存性や非等方性)を統計的に調べ,理論と比較する必要がある.著者らはそのような方法の1つとして,連星軌道の離心率を用いる方法を提案した.いくつかある軌道パラメータの中でも,特に軌道離心率に着目したのは,各形成シナリオの違いが顕著に現れると予想されるためである.軌道離心率は,重力波放射により連星の角運動量が持ち去られることにより時間とともに徐々に小さくなっていく.したがって,軌道離心率を観測することにより,連星形成から合体までの経過時間と連星形成時の軌道に関する情報が得られるのである.また,著者らは,重力波イベントの天球上の角度分布(非等方性)を測ることにより,ブラックホール連星が付随する銀河の種類やその環境に関する情報を得ることができ,形成シナリオを区別する助けとなることを示した.今後,重力波観測イベントの統計が増えるにつれ,ブラックホール連星の様々な性質が明らかになり,その形成起源に迫ることができるであろう.</p>
収録刊行物
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- 日本物理学会誌
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日本物理学会誌 72 (6), 398-401, 2017-06-05
一般社団法人 日本物理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763013754240
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- NII論文ID
- 130007384568
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- NII書誌ID
- AN00196952
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- ISSN
- 24238872
- 00290181
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- NDL書誌ID
- 028220567
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可