〓俊民・〓〓度・施洪云・〓玉庚 : 山東省褐色土の生成的特徴 菅野一郎訳

書誌事項

タイトル別名
  • Zhang Junming, Guo Xindu, Shi Hongyun and Zhang Yugeng (Translated by Ichiro Kanno) : Genetic Characteristics of Brown Earth in Shandong Province
  • 山東省褐色土の生成的特徴(資料)
  • サントウショウ カッショクド ノ セイセイテキ トクチョウ シリョウ

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抄録

本稿は山東省褐色土の生成的特徴の解明に重点をおくとともに肉桂色土〔褐土〕との比較をした。褐色土の生成的特徴は,溶脱作用[Eluviation]と粘土化作用[Argillization]が肉桂色土と比べとくに強いことを反映している。褐色土は一般に酸性〜微酸性を呈し,塩基未飽和で遊離炭酸石灰を含まないが,肉桂色土は中性〜アルカリ性を呈し,塩基過飽和で多くは遊離炭酸石灰を含み,偽菌糸状物が発達している。発達良好の褐色土断面は粘土の移動を示すばかりでなく,鉄・マンガンの溶脱集積も示す。肉桂色土は粘土の移動を示すが,褐色上ほどはっきりしないばかりでなく,鉄・マンガンの溶脱集積の特徴をもたない。×××褐色土は1905年ドイツの土壌学者E. Ramannが命名したものである。一つの生成的土壌型として,彼が当時与えた定義は甚だ不明確で,後代の引用者の考えに加えて,"褐色土"の名称には生成学的特徴が実際に極めて異なる多くの土壌が含まれたといえる。 早くも1935年,アメリカの土壌学者J. Thorpと中国の土壌研究者は山東省で土壌を調査し,ここの褐色土は耕作・侵蝕・被覆物の影響を極めて強く受け欧米の褐色土と異なり,とくに"山東褐色土"と命名し,"軽度ないし中度ポドゾル化"と"断面の発達が極軽微あるいは未発達"の2亜型を区分した。前者は酸性結晶岩(花圈岩と片麻岩を指す)と砂質頁岩の母村上に発達し,後者は黄土[Loess]と赤色粘土母材上に発達している。彼らは現地の土壌生成条件・土壌生成過程と属性が極めて異なる成帯性土壌をみな"山東褐色土"として区分したが,これは明らかに妥当ではない。1955年ソ連の土壌学者V.A. Kovdaは山東省済南市近郊に至る土壌調査をし,その後専門著作中でThorpが認めた山東褐色土はすなわち彼のいうところの肉桂色森林土であると述べたが,彼は同じ専門著作中でThorpの山東褐色土の威海衛統の化学分析データを引用し,褐色森林土(すなわち褐色土)の特徴を説明した。50年代後期に編さんされた全国土壌図で山東半島の大部分は肉桂色土分布区に画分されたが,褐色土はただ垂直帯上に存在しているだけで,これを山東褐色土と呼んだ。70年代に編さんされた全国土壌図では改変され,褐色土の画分は拡げられたが,沿海〔黄海沿岸〕の日照県一帯は肉桂色土に区分された。上述のような混乱した現象をつくった原因は実際上研究工作が極めて少なかったことにあった。1983年倪〓祥はユーラシア大陸東部・西部の褐色土の土壌生成条件と主な生成学的性質との対比研究をした際,国内の褐色土資料が少なかったので,止むを得ず東北の暗褐色森林土と華北の山岳褐色土の資料を代用した。われわれは最近数年山東省の褐色土について調査研究を実施し,ここの褐色土が過去に"山東褐色土"と呼ばれたものの一部に過ぎないことに気付いた。したがって"山東褐色土"は実際上褐色土と肉桂色土の両土壌型を含んでいたのである。褐色土は山東半島に広く分布し,とくに魯東〔山東省東部〕丘陵区にいっそう集中し,魯中南〔山東省中南部〕山岳丘陵区にも広く分布し,丘陵に存在するばかりでなく山腹や前山扇状地にも存在する。土壌母材は花崗岩・片麻岩の風化物を主とし,それに次ぐものは砂岩と頁岩の風化物である。肉桂色土はおもに魯中南山岳丘陵区の北部と西部に分布するが,済南・〓博ないし〓坊一帯に比較的集中して分布し,土壌母材は黄土と石灰岩風化物を主とし,それに次ぐものは石灰質砂岩・頁岩の風化物である。褐色土の集中的分布区の気候条件は肉桂色土区に比べ湿潤であるが,母材が異なっているので肉桂色土が分布する可能性もあり,肉桂色土は中間地帯で両者が交錯して分布している。本稿は山東省褐色土の生成的特徴の解明に重点を置いている。

収録刊行物

  • ペドロジスト

    ペドロジスト 31 (2), 176-186, 1987-12-31

    日本ペドロジー学会

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