パターナリズムの概念とその正当化基準 : 『自律を尊重するパターナリズム』に着目して

  • 石川 時子
    首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • The Theories of Paternalism and Criteria for Justification : Focusing on 'Autonomy-Respecting Paternalism'
  • パターナリズム ノ ガイネン ト ソノ セイトウカ キジュン ジリツ オ ソンチョウスル パターナリズム ニ チャクモクシテ

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説明

本稿は,従来社会福祉においてパターナリズムという語が,自律を抑圧すると否定的に集約されがちなことから,その概念と正当化基準を検討し再考したものである.先行研究からは5つの正当化基準を導き,近年は抑圧を回避すると考えられている「自律を尊重するパターナリズム」が論じられる傾向にあることを明らかにした.この基準は,被干渉者の個別性や自律を重視する社会福祉においても,親和性の高い基準といえる.しかし,通常パターナリズムとは批判的に扱われるため,その批判がどのような思想に基づいているのかを3点に要約した.パターナリズムを必要と考える場合と批判的にとらえる場合の相違点は自律の解釈にあるといえる.最後に,自律を尊重するパターナリズムの論には,自律概念の多義性と自律概念に内在しうる価値判断によって,抑圧的に作用する場合もあり,パターナリズムの正当化基準においては十分とはいえないことを明らかにした.

収録刊行物

  • 社会福祉学

    社会福祉学 48 (1), 5-16, 2007-05-31

    一般社団法人 日本社会福祉学会

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