4-ファルネシル-2-ニトロピロール天然物の全合成

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タイトル別名
  • Total Synthesis of 4-Farnesyl-2-Nitropyrrole Natural Products

説明

<p> ヘロナピロールA–C (1–3) は2010年にCaponらによってオーストラリアのヘロン島沖の海浜砂で採取された海洋由来放線菌Streptomycessp. (CMB-M0423) から単離された2次代謝産物である(Figure 1)1。ヘロナピロールA–Cはグラム陽性菌Staphylococcus aureus ATCC 9144 (IC50 0.6–1.1 mM) and Bacillus subtilisATCC 6633 (IC50 1.1–6.5 mM) に対して抗菌活性を示すことが報告されているが、グラム陰性菌に対しては活性を示さず、また哺乳類の細胞腫に対しても細胞毒性を示さないことがわかっている。その構造は2D NMRを中心に解析され、ピロール環の4位がファルネシル化され2位がニトロ化された構造が提出された。</p><p> このような構造は天然物としては極めて珍しく、他にはニトロピロリンA–E (4–8) が知られているのみである(Figure 2)2。ニトロピロリンA–Eは同じく2010年にFenicalらによってカリフォルニアのLa Jolla海岸で採取された海洋放線菌種CNQ-509から単離された化合物で、ヒト結腸癌細胞HCT-116 (IC50 5.7–31.1 mM) に対して細胞毒性を示すことが報告されている。ニトロピロリンA–Eの絶対配置を含めた構造は、NMR、改良Mosher法3、化学変換により4–8のように明らかにされている。</p><p> 一方ヘロナピロールの立体構造に関しては、ヘロナピロールAにおいて2級水酸基を利用した改良Mosher法により7S and 15Rの絶対配置が帰属されたが、8位の立体化学は不明である。ヘロナピロールB and Cの立体構造は生合成的な関係からAと同じであると推測され、ROESYスペクトルからCの左のTHF環のcis配置が報</p><p>告されるにとどまっていた。我々はヘロナピロールの4-ファルネシル-2-ニトロピロールという天然物としては極めて稀な構造、立体化学が不明であったこと、グラム陽性菌に対して選択的な活性を示すこと等に興味を持ち不斉合成研究を開始した。</p><p> その後2012年にSchmidt and Starkが天然物のアンチポードとなる (–)-ヘロナピロールCの全合成を報告し、天然物の (+)-ヘロナピロールCの絶対配置を11のように提案した(Scheme 1)4。そして今年Brimbleらによって (+)-ヘロナピロールC (11) の全合成が報告され、その絶対配置が証明された5。Scheme 1はCaponらが提唱していた1ヘロナピロールA–Cの生合成の相関関係を正しい絶対配置をもつ (+)-ヘロナピロールC (11) に基づいて書き直したものである。そうすると (+)-ヘロナピロールA and Bの絶対配置は9 and 10となることが推測される。それを証明するため我々は9 and 10の合成を行った。</p><p> 基本的な合成計画は酸化段階を整えたファルネシル鎖をピロールの4位へ導入した後、2位をニトロ化することにした。(+)-ヘロナピロールA (9) の合成をScheme 2に示す。既知の(15S)-ジオール12 (er = 96.5:3.5)6を出発物質とし、15位水酸基を選択的に保護する目的でブロモエーテル化を行ったところ、ブロモTHF体13(dr = ~6:1) を得た。立体選択性については定かではないが、ブロモニウムカチオン中間体において12位と15位の置換基のうち立体的に嵩高い置換基同士がアンチになるように環化したためと考えている。</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763022098560
  • NII論文ID
    130007399501
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.56.0_poster48
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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