スーパーエンハンサープロファイリングによるT細胞性白血病の分子病態の理解

  • 三田 貴臣
    シンガポール国立大学 がん科学研究所 シンガポール国立大学医学部 内科学

書誌事項

タイトル別名
  • Understanding of molecular pathogenesis of T-cell leukemia by super-enhancer profiling
  • スーパーエンハンサープロファイリング ニ ヨル Tサイボウセイ ハッケツビョウ ノ ブンシ ビョウタイ ノ リカイ

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説明

<p>スーパーエンハンサーとは,クラスターを成した巨大なエンハンサー領域であり,活性化ヒストンマークに対するChIP-seq解析などを通して定義される概念である。その生物学的な意義については未だ議論の余地があるが,正常発生や病態における重要な遺伝子の特性として,その概念の有用性が認識されてきている。多くのがん細胞においては,病態形成に重要な遺伝子の多くがスーパーエンハンサーを伴っており,例えばT細胞性急性リンパ性白血病では,がん遺伝子TAL1およびそれと協調的に働く転写因子GATA3RUNX1MYBなどの遺伝子がスーパーエンハンサーによって制御されている。これらの遺伝子発現は,小分子CDK7阻害剤などの作用による転写抑制に対する感受性が高い。その他の多くのがんでも同様の報告がされている。これらの知見に基づき,我々は,複雑なゲノム異常を有した造血器腫瘍の1つである,成人T細胞性白血病に対してスーパーエンハンサー解析と遺伝子発現解析を行い,その病態形成に関わる新たな責任遺伝子の同定を試みた。本稿では,スーパーエンハンサーの概念について概説するとともに,その医学生物学研究における意義,およびがんの病態理解のためへの応用について議論する。</p>

収録刊行物

  • 臨床血液

    臨床血液 59 (7), 899-908, 2018

    一般社団法人 日本血液学会

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