がんの治療と仕事の両立からみた政府主導「働き方改革」の整合性と課題

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タイトル別名
  • Government-led “work-style reforms” from the perspective of work-life balance for the patients with cancer treatment
  • ガン ノ チリョウ ト シゴト ノ リョウリツ カラ ミタ セイフ シュドウ 「 ハタラキカタ カイカク 」 ノ セイゴウセイ ト カダイ

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抄録

<p>目的:本稿では,少子高齢化社会における経済活性化策といった全国民にとっての関心事になりうる文脈から出された患者の就労支援施策について,患者のQOL向上という観点からの利点と懸念について考察する.</p><p>内容:がん患者の就労支援は,1)がん治療の進歩による生存率の向上,2)就労可能年齢のがん罹患の増加,3)入院期間が短縮による外来通院による治療期間の長期化を背景として,施策として取り組まれてきた.がん対策においては,2016年に発足した働き方改革実現会議での議論より早く,2012年の第2期がん対策推進基本計画から継続的に取り組まれてきた課題である.女性の参画をはじめ,様々な働き方を許容しようという働き方改革の一環として位置づくことにより,がん患者に向けた特別な施策としてではなく,全国民の関心事としての位置づけが可能となった.施策により望まない離職が減ることも期待される.一方で,この社会の風向きの変化は,不安定な労働基盤の人の就労継続にはつながらない可能性が高い.治療時期におけるペースダウンの許容だけでなく,闘病期間を経た後も,その人の望むキャリアコースが維持されるような職場環境の醸成も必要である.</p><p>結論:働き方改革の流れを汲むことで,病と共に生きる人の社会への十全な参加に繋がるとすれば,それは望ましい方向である.しかしながら,その影響が一部の能力や環境に恵まれた人だけのものに留まり,新たな格差が生まれることを懸念する.</p>

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