鉄を含めた物質循環モデルの現状と課題

  • 三角 和弘
    一般財団法人電力中央研究所 環境科学研究所 大気・海洋環境領域
  • 津旨 大輔
    一般財団法人電力中央研究所 環境科学研究所 大気・海洋環境領域

書誌事項

タイトル別名
  • Current status and issues of marine biogeochemical cycle models with a focus on the iron biogeochemical cycle
  • テツ オ フクメタ ブッシツ ジュンカン モデル ノ ゲンジョウ ト カダイ

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抄録

<p>鉄は高栄養塩-低クロロフィル海域において基礎生産を制限する一方,窒素制限海域において窒素固定生物の生産を制限しており,海洋の物質循環を理解する上で重要な栄養素である。海洋の二酸化炭素吸収量の推定のため,3次元の海洋物質循環モデルが1990年代に発展した。しかし,鉄がモデルで考慮されるようになったのは,観測データが不足していたこともあり,2000年以降になってからであった。時空間的に限られた観測データに基づいて定式化が行われた初期の海洋鉄循環モデルでは,大気からの降下による供給と有機配位子との錯形成を考慮したスキャベンジングによる除去により分布が決まるという循環像が描かれていた。その後の観測データの集積によって,海洋の鉄循環はより複雑なものであり,海底堆積物や熱水など多様な供給過程や,有機配位子の循環,コロイド粒子の凝集などが海盆スケールの溶存鉄濃度分布に影響を与えていることが明らかになった。本稿では,鉄を含めた海洋物質循環モデルの開発の歴史を振り返ることで,モデルの現状と今後の課題について述べるとともに,2015年から開始された海洋鉄循環モデルの国際相互比較に関する動向を紹介する。</p>

収録刊行物

  • 海の研究

    海の研究 26 (3), 95-111, 2017-05-15

    日本海洋学会

参考文献 (78)*注記

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