ワンポット位置選択的臭素化反応を利用した天然物合成

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タイトル別名
  • One-pot Method for Regioselective Bromination in the Total Syntheses of Natural Products

説明

<p>【緒言】</p><p> 我々は、近年、アリルアルコール誘導体へのワンポット位置選択的臭素化反応を開発した(Scheme 1)1)。本反応は、アリルアルコール誘導体への臭素付加とそれに続く選択的臭化水素脱離反応を同一系内で一挙に行う反応であるが、脱離反応における高選択性には、隣接する酸素官能基の誘起効果(電子求引性)が大きく関与している。換言すれば、ワンポット位置選択的臭素化反応は基質特異的な反応ではあるが、一方では、特別に高価な試薬や特殊な反応装置、極端な無水条件を必要とせず、しかも温和な塩基性条件下の反応であるため、官能基許容性に優れた非常に実用的な反応と言える。 これまで我々は、本反応を効率的に利用することで、種々の天然物の全合成を達成してきた。本発表ではその中からいくつかの全合成例を報告し、本ワンポット反応の実例とその有用性について紹介する。</p><p>Scheme 1. アリルアルコール誘導体へのワンポット位置選択的臭素化反応</p><p>【(+)-Heteroplexisolide Eと(–)-5,6-seco-Germacrane lactoneの全合成】</p><p> 市販原料から容易に調製可能なキラルビルディングブロック(+)-1に対し、ワンポット位置選択的臭素化反応を行い (+)-2とした後、さらに同一系内で根岸カップリング(メチル基導入)を行うことで (+)-3を得た。このように本反応は、続く遷移金属触媒反応(鈴木–宮浦カップリングや薗頭カップリング等)を連続して行うことが出来るという利点がある1b)。続いて、アルドール縮合、脱保護を経て (+)-5とした後、2–メチルアリルアルコール部位をプレニル基へと変換し、(+)-Heteroplexisolide E ((+)-6) の初の全合成を達成した(Scheme 2)2)。</p><p>Scheme 2. (+)-Heteroplexisolide Eの全合成</p><p>Scheme 3. (–)-5,6-seco-Germacrane lactoneの全合成</p><p> また、キラルビルディングブロック (–)-1よりビニルブロミド (–)-2へと誘導した後、Hoveydaらの方法に従って別途調製した (–)-83)と鈴木–宮浦カップリングを行い、(–)-9を高い収率で合成することに成功した。次に、Eschenmoserメチレン化反応、シリル基の除去、生じた1級水酸基のカルボン酸への酸化、PMB基の除去を順次行い、(–)-5,6-seco-Germacrane lactone ((–)-12)の初の全合成を達成した(Scheme 3)4)。</p><p>【Aplysinoplide Bの全合成】</p><p> </p><p>Scheme 4. Aplysinoplide Bの全合成</p><p>Z–アルケン13に対してワンポット位置選択的臭素化反応を行い、三置換ビニルブロミド14を単一化合物として得た。次に、トリエン15と鈴木–宮浦カップリグを行った後、シリル基の切り替え、ベンゾイル基の脱保護、生じた水酸基の酸化、3–ブロモフランとのカップリングを経てケトン17を合成した。続いてCBS還元を行い(+)-18と(–)-18を別途合成し、それぞれに対してTBDPS基の脱保護、フラン環の一重項酸素による酸化を行って(+)-19と(–)-19を得た。両合成品の比旋光度と天然物の比旋光度とを比較することによって、天然型のAplysinoplide Bが有する4位の2級水酸基の立体化学はR配置 ((+)-19) であると決定した(Scheme 4)5)</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763049683328
  • NII論文ID
    130007491721
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_posterp48
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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