勝山ニホンザル集団と淡路島ニホンザル集団における個体間距離と遊動域の季節変化

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  • Seasonal changes in interindividual distances and home range in the Katsuyama and Awajishima free-ranging group of Japanese macaques

抄録

<p>個体間距離や遊動域は,集団の凝集性を構成する重要な要素である。給餌時であっても攻撃交渉が起こりにくい寛容な社会構造を持つ淡路島ニホンザル餌付け集団(兵庫県洲本市)と専制的な社会構造を持つ勝山ニホンザル集団(岡山県)を対象に,個体間距離と遊動域の季節変化を検討した。GPS首輪発信器を成体メスに装着し,2時間毎に毎日7回測位を行った。2016年8月から2018年3月の期間において,設定したすべての測位ポイントのうちPDOP値が4未満であった淡路島集団の4714点(46%)と勝山集団の3180点(65%)を解析対象とした。固定カーネル密度推定法を用いて,遊動域を月ごとに推定した。勝山集団の遊動域は,平均698ha,最大が1335ha(9月),最小が16ha(2月)であった。淡路島集団の遊動域は,平均458ha,最大が1275ha(10月),最小が71ha(1月)であった。8月から10月にかけては,勝山集団の非血縁ペア1組,淡路島集団の非血縁ペア2組と血縁ペア1組の測位を同時に行うことができたため,個体間距離を算出した。個体間距離の中央値は,勝山集団で44m,淡路島集団で112mであった。最大値は,勝山集団が372m,淡路島集団が3462mであった。個体間距離が200m以上離れた測位の割合は,勝山集団で3%,淡路島集団で42%であった。両集団の遊動域は,秋に広がり,餌場への依存が強まる冬に狭くなることが共通して確認できた。秋に遊動域が広がると,淡路島集団では個体間距離も広がる一方で,勝山集団の個体間距離は広がりにくかった。先行研究では200mを超えるとクーコールがほとんど聞こえなくなると考えられていることから,秋の淡路島集団では頻繁にサブグルーピングが生じていると考えられた。今後はサブグループの大きさや構成を調べることで,淡路島集団が示す離合集散の程度を評価することができるだろう。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763071766784
  • NII論文ID
    130007521102
  • DOI
    10.14907/primate.34.0_58_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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