遺伝性・家族性乳がん診療のコンセンサス −多施設アンケート結果から−

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  • Current Consensus of the Management of Hereditary, Familial Breast Cancer on the Results of Questionnaire to Multi Centers

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抄録

わが国における遺伝性・家族性乳がん診療に関する意識と実地臨床の現状を検証した.京都大学,京都府立医科大学の関連施設を対象にアンケート調査を行い,27 施設・60 名の乳腺外科医より回答を得た.遺伝子性乳がんを疑う症例を経験したことのある施設は52 %,そのうち遺伝子解析を行ったことのある施設は11 %であった.遺伝子を行わない理由としてカウンセリング体制の不備(82 %)や遺伝性乳がんの対処法についてのコンセンサスが得られていない(78 %)を挙げる施設が多かった.遺伝性乳がん家系と判明した場合,発端者の家族に対して89 %が遺伝子相談を紹介するとしたが,予防法は検診のみが97 %であり,化学予防や手術予防を行うと答える外科医はほとんどいなかった.家族性乳がんが疑われる乳がん患者に対して,温存手術を施行すると答えた外科医は83 %ともっとも多く,対側の予防的乳房切除を行うと答えた外科医は5 %にすぎなかった.遺伝性・家族性乳がんに対して,臨床現場では遺伝子検査やリスク軽減手術は講じられていない.社会全体が真摯にこの問題に取り組み,わが国でのコンセンサスの形成と保険制度上の環境整備を行う段階にあるといえる.

収録刊行物

  • 家族性腫瘍

    家族性腫瘍 12 (2), 45-49, 2012

    一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会

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