霊長類の野外研究における倫理的課題―国際霊長類学会のガイドラインと国内霊長類研究における問題点―

  • 森光 由樹
    兵庫県立大学自然・環境科学研究所/兵庫県森林動物研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Ethical issues and prospects of primate field research—Guidelines of the international primate society and the problems of Japanese primate studies—
  • レイチョウルイ ノ ヤガイ ケンキュウ ニ オケル リンリテキ カダイ : コクサイ レイチョウルイ ガッカイ ノ ガイドライン ト コクナイ レイチョウルイ ケンキュウ ニ オケル モンダイテン

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説明

<p>霊長類の倫理規定は,日本霊長類学会が1986年に「サル類を用いる実験遂行のための基本原則」を策定公表し,その後,さらに内容を充実させて「飼育下にある霊長類の管理と実験使用に関する基本原則」を策定して公開した.飼育や実験動物のガイドラインの策定は進んだものの,野外研究に関するガイドラインの策定は進まなかった.その理由として,霊長類は大型類人猿から,オナガサル類,オマキザル類,コロブス類,小型原猿類など種が多く,生命倫理に対する考え方が対象種によって異なることが挙げられる.国際霊長類学会(IPS)と米国霊長類学会(ASP)は,野外研究のガイドラインを作成して公開している.その主な内容は,人道的動物実験における3Rの原則,つまり,代替法の検討(Replacement),使用個体数の削減(Reduction),苦痛の軽減(Refinement)に加え,研究者の責任,知識の発展と公表,公衆衛生と環境への配慮,調査地域住民への配慮とインフォームドコンセント,霊長類の保全,関連法規の遵守などである.現在,日本霊長類学会では,霊長類の野外研究に関する倫理ガイドラインの公表に向けて準備が進められている.今後,日本哺乳類学会においても倫理に関するガイドライン策定は急務である.そのため関係する学会と連携をとりながら作業を進めることが重要である.</p>

収録刊行物

  • 哺乳類科学

    哺乳類科学 58 (2), 265-273, 2018

    日本哺乳類学会

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