米国企業による日本的TQMの導入

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  • Adaptation of Japanese Style TQM by American Companies

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抄録

60年代までには米国製品の安物のイミテーションと思われていた日本製品が,70年代には高品質の代名詞になり,それが今日まで続いている.80年代の初めには米国産業でも品質改善やジャスト・イン・タイム等の日本的なアプローチの導入の必要性に気が付きはじめ,JIT/TQCが80年代の米国製造業のメインテーマになったといえる.AT&Tパワーシステム社は,88年から89年にかけて製造・設計部門にJITを導入し,工場のレイアウトをすっきりさせ,品質や従業員のモラールによい影響をもたらし,収益を改善した.さらに,全社的な品質改善の概念の導入の必要性を感じたのが90年である.当時,納期遵守率が低く,コストも高く品質水準も満足なものではなかった.日本的TQCに関する情報は断片的なものでしかなく,かつ米国の文化に果たして適合するかという不安もあった.そこで,文献のサーベイを通してTQCの理解をするとともに,TQCの文化的意味合いをもつもの,システムズ・アプローチ,ツールと方法を体系的に区分し,自分達の強みと特性との比較,分析を行った.その結果,文化的違いはあるもののそれ以上に品質に対する方針管理や機能別管理に代表されるシステムズ・アプローチに大きなギャップがあることに気がついた.このような分析を通して,TQMの導入を成功させるためには何より米国と日本の強みを統合することが不可欠であることを認識し,方針管理,日常管理,QIストリー,ポカヨケ,スキル向上チーム,提案制度,報酬と表彰制度がTQMとして取り込まれた.このような統合アプローチにより,日本的TQMを米国の文化に組み込むとともに,そのプロセスそのものがTQM実践を強化し,その進化に寄与したものと信じている.しかしながら,TQMにチャレンジした米国企業のほとんどが失敗を経験し,成功例は数少ない.その原因は,ひとつはあまりにも短期の結果を求めることによる長期的な視点の欠如である.あるいはトップの理解と関与の不足である.また,いくらトップが熱心であってもTQMを実践するノウハウの不足もある.これらの問題が解決できた企業では,TQMは大きな成果を生み出すし企業の文化の一部ともなる.AT&Tパワーシステム社は,マルコム・ボルトリッジ国家品質賞受賞会社とともに,このクラスに入る数少ない企業といえよう.

収録刊行物

  • 品質

    品質 26 (2), 20-24, 1996-04-15

    一般社団法人 日本品質管理学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763097928960
  • NII論文ID
    110003154588
  • NII書誌ID
    AN00354769
  • DOI
    10.20684/quality.26.2_20
  • ISSN
    24321044
    03868230
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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