複数の関係性を媒介としたスラム住民の交渉可能性――デリー・スラム地域における生活環境向上の試み――

  • 茶谷 智之
    京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(博士課程5年一貫制)

書誌事項

タイトル別名
  • The Possibility of Activating the Sociopolitical Agency of Slum Dwellers through Various Relationships ――Efforts to Improve the Living Environment in a Delhi Slum――
  • フクスウ ノ カンケイセイ オ バイカイ ト シタ スラム ジュウミン ノ コウショウ カノウセイ : デリー ・ スラム チイキ ニ オケル セイカツ カンキョウ コウジョウ ノ ココロミ

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抄録

<p>本稿は,インドの首都デリー・スラム地域に暮らす住民が生活環境向上を実現する様相を明らかにし,スラム住民の社会政治的なエージェンシー拡大の条件を考察するものである.法・政策の制定および実施過程における官民連携化が進むなか,調査スラムには,ローカルリーダーと政治家との政治的な関係性,NGOと女性や子どもとの市民社会的な関係性,住民同士の共助の関係性という目的の異なる関係性が散在していた.しかし近年,生活環境をめぐる課題に応じて立ち現れるスラム住民の集合体が,異なる特徴の関係性を利用できるさまざまなアクターを巻き込み,スラム住民の利用可能な関係性を拡大することで,一個人では利用できない関係性を用いた問題解決の手配を行っていた.これは特定の関係性をスラム住民のエージェンシー拡大の条件と捉える従来の見解に対し,複数の関係性それぞれの特徴を活かし,その多様性を維持することが条件となることを示していた.</p>

収録刊行物

  • 社会福祉学

    社会福祉学 57 (2), 93-105, 2016-08-31

    一般社団法人 日本社会福祉学会

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