医療専門職——利他的か、公衆に対する利己的脅威か?——

書誌事項

タイトル別名
  • The Medical Profession: Altruistic or a Self-Interested Threat to the Public?
  • 特別講演 医療専門職 : 利他的か、公衆に対する利己的脅威か?
  • トクベツ コウエン イリョウ センモンショク : リタテキ カ 、 コウシュウ ニ タイスル リコテキ キョウイ カ?

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抄録

<p>現代の新自由主義社会においては、伝統的に、医療専門職は高度に道徳的品性を有する存在、自身の利益よりも公益を優先させる存在とみなされてきた。そのような見方は、保健医療領域の典型的な専門職だけではなく、他の分野の専門職においても当てはまる。しかし、1960年代から70年代にかけての反体制文化の影響を受けて、医療専門職が利己的であり、利他主義的イデオロギーの見せかけの下で、実は国民の利益よりも医療専門職自身の利益を優先させているといった異議申し立て(contestation)や論争が起こってきた。帝国主義的に医療化の範囲を拡大することから代替医療従事者への不当な迫害にいたるまで、医療専門職はすべてのことに有害に関与していると見なされてきた。この背景には、社会理論の主流における[医療専門職に対して——角括弧は訳者による補足、以下同じ]より支持的だった特性・機能主義的アプローチから、[医療専門職に対して]より批判的であり、今や支配的となった新ヴェーバー主義的パースペクティブへの転換という影響がある。</p><p>本講演では、実証的事例に基づき、医療専門職が利他的あるいは利己的のいずれとみなされうるのかについて、この問題を判断するための明確な方法論的枠組みを用いることの重要性と同時に、度々誤認される議論の複雑性——自己利益と公共の利益は必ずしも対置されるものではないという事実に集約される——を強調しながら、利他–利己論争に光を当てる。また、この議論は、新ヴェーバー主義が他の視点、とりわけフーコー主義やマルクス主義パースペクティブによってこれまで挑戦を受けてきたという理論的観点から批判的に取り扱われる。フーコー主義やマルクス主義パースペクティブにも弱点はあるが、医療専門職を単に島[孤立した存在]としてみなすことができず、医療専門職が統治性と資本主義の広範な社会–政治的構造に結びついたものであるということを強調している。</p><p>しかしながら、もし医療専門職が利他的であるという主張がより広い文脈において検証されなければならないとしたら、それは新制度主義者アプローチによって最も強調される。新制度主義者アプローチは、医療やその他の専門職を、制度形態の生態学(an ecology of institutional forms)における他制度との生存競争下のひとつの制度とみなす。この環境下における医療専門職の利他–利己的志向を理解することは、社会学的にのみならず、健康政策の観点からもきわめて重要である。医療専門職の規制という観点から言えば、国家が承諾した自己規制から、公衆保護のため医療者に対するより公的で外的なコントロールがみられる規制された自己規制(regulated self-regulation)へと近年の移行が起こっているいくつかの新自由主義国家においては、上記のことはとりわけ事実なのである。</p>

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