タイにおける米の生産とその問題点

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タイトル別名
  • Rice Production of Thailand and Its Problems
  • タイにおける米の生産とその問題点〔英文〕
  • タイ ニ オケル コメ ノ セイサン ト ソノ モンダイテン エイブン

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抄録

<p> タイ経済のなかで,米は重要な役割を演じている.米はタイ人の主食であるが,また外貨を獲得する最大の輸出品目でもある.水稲作は天水田,灌漑田,深水田などで行われているが,一部の灌漑田を除き,その生産は不安定であり,しかも単収は低い.タイでは移植法の他に直播法も行われている.<br> 米の品種改良は1956年以来,高収量品種の開発が進み,それぞれの水田条件や地域の消費者の嗜好に適する品種の普及を図っている.改良品種の普及に伴い化学肥料や農薬の使用は増加しているが,投入水準は低い.米価に対して肥料価格が相対的に高いこと,不確実な気候や病害虫の発生による効果の低下,あるいは全般的な肥培管理技術の低さなどが原因している.<br> タイの東北部,北部および南部ではいまだ役畜を利用しているが,1戸当り水田面積の広い中部平原ではトラクター,耕耘機,脱穀機,動力噴霧機,小型4輪トラックなどの普及率が高い.また,中部平原では顧客に対する脱穀サービス制が見られる.トラクタライゼーションは米の生産量を増加するとともに,大豆や野菜を雨期の稲作と乾期の稲作の間に栽培することを可能にするため,その重要性が高まっている.<br> 灌漑田は米作付面積の約30%で,近年あまり増えていない. 既存の灌漑田についても,乾期の水不足,排水施設の不完備,整地度の低さなどで,十分に機能を発揮していない.<br> 稲作の所得は,米価に比べ肥料等の経営費が相対的に高いために低い.農民は負債の返済,地代,賃金の支払いなどのため,米を収穫直後に米仲買商人や精米業者に販売する.米の中央市場は数が少なく,情報網の未整備,輸送手段の未発達などが,米流通を非効率的にしている.</p>

収録刊行物

  • 農業経済研究

    農業経済研究 62 (2), 95-103, 1990-09-26

    日本農業経済学会

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