中国稲作農家の適正経営規模に関する軽量分析 : 遼寧省海城市の事例を中心に

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  • An Econometric Analysis on the Optimal Scale of Rice Farming in China : A Case Study of Haicheng City, Liaoning Province

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抄録

今現在の中国稲作の生産力水準に関して,遼寧省海城市を代表例として挙げるなら,一般的農家は人力・畜力段階にあると判断される.しかも生産技術,施設投資,従事者の素質等の面では依然として低位であるから,農家の耕地面積は農家生産活動の決定的生産要素となる.従って,稲作農家の経営規模をとらえる基本的な指標は耕地面積であり,適正経営規模の大きさは地域,生産農家の経営条件によって異なる.遼寧省海城市の農家の適正経営規模は134〜360aと確認された.それは適正経営規模の幅である.中国における,農業の適正経営規模を推進する政策は10年前に打ち出された.しかし,今でも数多くの地域では,農業経営はまだ零細である.海城市では,計測結果により16.2%の農家経営が適正経営規模(134a〜360a)である.一方,83.8%の農家の経営規模が狭小である.その原因として,遼寧省海城市の状況により,経営規模の拡大には,次のような条件が必要であると考えられる.すなわち,第二次,第三次産業の発展→社会構造の柔軟性を保ちつつ,農業労働力の農外移転→農地流動化→農家の経営規模の拡大を図ることである.しかし,現状では,多くの複雑かつ困難な問題をかかえているため,農村の第二次,第三次産業の急速な発展は難しく,総人口13億人の7割以上ある農村人口の出稼ぎも確保されず,農地流動化は予定通りには進んでいない.中国農業部の調査によれば,1994年までに29の省(自治区,直轄市.チベット含まず)で適正経営規模(134aの耕地面積)を行う経営面積は600万ha余に止まり,農地面積の6.5%を占めるにすぎない.従って,農家の適正経営規模問題は中国の長期的課題でもある.適正経営規模は地域の自然や社会や経済等の条件によって異なっている.ここで計測した農家の適正経営規模は制約の伴わない理想的なものであるから,実現するには国によるいろいろな政策努力や個々の農家の経営努力が必要であると思われる.しかも耕種農業における規模拡大の問題は,中国のみならず東南アジアの農業発展にとって今後とも大きな課題でありつづけることは明らである.必ずしも十分な調査ができたわけではないが,遼寧省海城市の場合には農産物価格政策,農業技術水準と農業機械化の促進政策,耕地の所有権・利用権の移動政策等により農業適正経営規模の形成に有利である.さらに飯米供与,年金支給等も含めた村レベルにおける経済機能の維持・拡大により,農業労働力の離農が容易であったともいえる.他方,実勢地代の引き上げはむしろ規模拡大の結果であり,適正経営規模の創設は,地代の引き上げに先だって政策的に行われたというべきであろうが,こうしたことの現実的可能性を示したという意味で,中国にとどまらない重要な意義があるというべきであろう.農家の努力としては,農家自身の経営能力の増進,民間合作組織の形成等はその一例である.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763106376448
  • NII論文ID
    110009977474
  • NII書誌ID
    AA11646210
  • DOI
    10.20809/seisan.8.2_1
  • ISSN
    24242403
    13410156
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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