乳牛におけるカラードプラ法による受胚牛選定と超早期妊娠診断

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タイトル別名
  • Studies of the novel methods for recipient selection and ultra-early pregnancy diagnosis using color doppler ultrasonography in dairy cows
  • ニュウギュウ ニ オケル カラードプラホウ ニ ヨル ジュハイギュウ センテイ ト チョウ ソウキ ニンシン シンダン

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抄録

<p> 牛の胚移植(ET)の受胎率向上を図るためには,黄体サイズを基準とする現行の受胚牛選定方法を改良する必要がある.また,牛における妊娠診断は,直腸検査または超音波画像診断装置を用いて人工授精後25 〜40日以降に行われている.しかし,牛の発情周期は平均21日であるため,不妊であった場合は次回の発情を見落とす可能性がある.近年,新しい黄体機能の評価方法として,超音波カラードプラ法(CDUS)を用いて測定した黄体の血流量が着目されている.そこで,CDUSを用いて測定した黄体血流量に基づく受胚牛選定法と,早期妊娠診断法の有用性を検討することを目的として研究を実施した.試験1として,CDUSを用いて受胚牛のET前後(Day 3,5,7および14;Day0 = 発情日)の黄体血流量の解析を行い,受胎牛と不受胎牛における推移の比較を行った.黄体血流量の指標として,黄体血流面積(BFA)およびらせん動脈の黄体側基部における時間平均最大血流速度(TAMV)を用いた.その結果,受胎牛では不受胎牛に比較してDay 7および14でBFAが有意に高値を示し,Day 14でTAMVが有意に高値を示した.さらに,従来から用いられている黄体面積や血漿プロジェステロン(P4)濃度に比較してDay 7ではBFAが妊娠予測に有用であり,カットオフ値を0.43 cm2に設定することで,高い感度(79.4%)と特異度(75.0%)を同時に得ることができた.また,Day 14においてはBFAとTAMVが妊娠予測に有用であり,BFA 0.63 cm2 かつTAMV 50.6 cm/sをカットオフ値に設定することで,最も高い感度(85.3%)と特異度(91.7%)を同時に得ることができた.性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)製剤の投与により,黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が急速に増加する.LHとFSHは黄体の血管新生因子の制御に関与していることから,GnRH製剤の投与により黄体の血管形成が変化する可能性がある.そこで,試験2として,Day 5にGnRH製剤を投与した牛と非投与牛のET前後(Day 3,5,7および14)のBFAとTAMVを解析し,黄体血流量および妊娠予測精度に及ぼす影響を検討した.その結果,Day 7および14において,GnRH投与群のBFAは対照群に比較して有意に高値を示した.さらに,GnRH-受胎群では,対照群およびGnRH-不受胎群に比較してDay 7および14のBFAが高値を示した.Day 7においては,BFAのカットオフ値を0.52 cm2に設定することで,高い感度(83.3%)と特異度(90.5%)を同時に得ることができた.Day 14においては,BFA 0.94cm2 かつTAMV 44.93cm/s をカットオフ値に設定することで,高い感度(97.1%)と特異度(100%)を同時に得ることができた.試験1で得られた予測精度と比較すると, Day 14における妊娠予測の精度が有意に向上することが明らかとなった.以上より,CDUSによるBFAとTAMVの測定は,受胚牛の受胎性の評価や受胚牛の選定および超早期妊娠診断に有用であり,Day 5 にGnRH製剤を投与することで超早期妊娠診断の精度が向上すると考えられた.</p>

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