『中論』注釈書の漢訳について

書誌事項

タイトル別名
  • The Chinese Commentaries of the <i>Mūlamadhyamakakārikā</i>
  • 『 チュウロン 』 チュウシャクショ ノ カンヤク ニ ツイテ
公開日
2018
DOI
  • 10.18963/chisangakuho.67.0_21
公開者
智山勧学会

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説明

Bhāvivekaの著作Prajñāpradīpa(PP)はNāgārjunaの主著Mūlamadhyamakakārikā (MMK)の注釈書であり、チベット語訳(PP Tib.)と漢訳『般若灯論釈』(灯論)が現存している。これら2種の翻訳について、これまでの研究において扱われてきたのは専らPP Tib.であり、灯論について論じられたものは極めて少ない。その理由としては灯論の訳者である波羅頗迦羅蜜多羅Prabhākaramitraによる漢訳の不備が挙げられる。<br>  しかしながら、近年の研究において「灯論の価値が見直されるべき」という提言がなされ、改めて灯論に関する研究が行われるようになった。そしてそれらの研究に基づきAkahane[2013]ではPP Tib.と灯論について「両訳のサンスクリット原点が異なっていた」という仮説が提示された。<br>  これについて、実際に両訳の相違点を精査したところ、PP Tib.と一致しない灯論の記述の中で、先行する漢訳MMK注釈書である青目釈『中論』(青目註)と一致するという例が確認された。青目註は鳩摩羅什による漢訳のみが現存している。<br>  よって本稿においてはそれに該当する例をPP Tib.、灯論、青目註の3種のテキストの中から挙げ、比較を行うことで、灯論について上記先行研究の仮説とは異なった観点から考察を試みた。<br>  実際に例として挙げたのはMMK第18章第7偈と、それに対する灯論と青目註の注釈である。この注釈の中で、灯論に青目註と同一の記述が認められ、さらにそれはPP Tib.には見られないものであった。また、その青目註の記述については、訳者である羅什によって意訳された偈頌と対応した内容となっているため、原典由来の記述ではなく、羅什によって加筆されたものであると考えられる。そのため、灯論に見られる同一の記述については同論の漢訳の際に先行して漢訳されていた青目註の記述から流用されたものであるという結論にいたった。

収録刊行物

  • 智山学報

    智山学報 67 (0), 21-33, 2018

    智山勧学会

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