Determing for factors of land use pattern on Alluvial fans in Japan

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  • 日本の扇状地における土地利用規定要因の検討

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1.はじめに<br><br> 日本の扇状地における土地利用について,地理の教科書などでは,堆積物が砂礫のため地下に水が浸透しやすく、特に扇状地の扇央部では土地利用が水田に適さず、果樹や畑、森林として利用されてきたと説明されていることが多い。一方で、黒部川扇状地などの北陸地方の扇状地や東北地方の扇状地では、歴史的に土地改良や用水の整備などの人間活動の影響を受けて扇面の大半が水田化されている扇状地も知られている。<br><br> 本研究では、全国の扇状地で扇面がどのように利用されているかを明らかにするために,公開されている地理情報を用いて土地利用調査を行い,扇状地の土地利用を規定する要因について自然条件と人文条件の観点から検討を行った。<br><br>2.調査対象と方法<br><br> 調査対象は,斎藤(1988)が規定している2km2以上の面積を持つ490の扇状地の中から地形図,治水地形分類図の判読から現成面が発達する365の扇状地を選び出した。この365の扇状地を対象に国土数値情報 土地利用細分メッシュデータ(1986年)をGIS上でオーバーレイ処理を行い、扇状地それぞれの土地利用比率を測定した。さらに各土地利用の比率と、以下の地域条件(面積平均勾配,標高,温量指数,年平均積雪深,DID)との関係について考察を行った。<br><br>3.土地利用調査結果<br><br> 日本の365の扇状地を比較した結果,水田が最頻となる扇状地は263か所,畑が最頻となる扇状地は30か所,果樹園が最頻となる扇状地は15か所,森林が最頻となる扇状地は8か所,荒地が最頻となる扇状地は1か所,建物用地が最頻となる扇状地は,46か所であった。日本における扇状地は,その大部分が水田化していることが確かめられた。特に,北陸・東北地方で水田が扇面を占める割合が高い。一方,水田以外の農業的土地利用が卓越する扇状地は限られている。ただし,北海道では,畑が卓越する傾向のある扇状地が多くみられた。特に道東に畑が卓越する扇状地がみられる。<br><br>4.土地利用と自然および人文条件の関係<br><br>扇状地の面積の関係について,水田はどの面積の扇状地であってもみられた。しかし,森林や果樹園が卓越する扇状地は,その多くが小型の扇状地に限られている。扇状地と傾斜の関係について,平均勾配が小さい扇状地では,水田や畑が立地しやすく,平均勾配が大きい扇状地で果樹園や森林が発達する傾向にある。<br><br>扇状地の面積と傾斜は,流域の地形条件や扇状地の形成プロセスに関係すると考えられる。小型かつ急な傾斜を持つ扇状地は主に土石流に形成された沖積錐である。以上より,土地利用は,扇状地の形成プロセスに影響を受ける可能性が高い。<br><br>暖かさの指数が60を下回ると畑が卓越する傾向にあり、60を上回ると水田が卓越する傾向が求められた。温量指数は,北海道における土地利用を規定する一因と考えられる。<br><br>扇状地と都市の関係について,都市の中心地が扇面に分布していたり,地域において中心性を持った都市のDIDが扇面に分布している場合には,建物用地が卓越する傾向がみられた。<br><br>扇状地の土地利用は,単一の条件だけではなく,自然条件に加え人文条件によって規定されている。いくつかの条件が複合的に組み合わさることで土地利用を形成しているといえる。<br><br>5.今後の課題<br><br> 本研究では,全国の扇状地を扱ったため,個別に扇状地における土地利用と地域的な条件について詳細に分析はできなかった。今後は特徴的な土地利用の扇状地に対して調査を行い。土地利用の傾向を規定する要因について個別具体的に検討していきたい。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282763119353600
  • NII Article ID
    130007628620
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_301
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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