モニタリングによる動機付け

  • 鈴木 孝則
    早稲田大学大学院博士後期課程社会科学研究科政策科学論専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Motivation through Monitoring
  • モニタリング ニ ヨル ドウキ ヅケ

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抄録

<p>本研究では,業績(アウトプット)が検証可能でないためにそれを動機付けの手段として利用できない場合に,努力(インプット)を直接モニターすることにより動機付けを行う方法が有用性をもつ条件をプリンシパル・エイジェント・モデルにもとついて考察する.モニタリングのコストが無視できないとすると,委託者が受託者の怠慢を防止しようとしてモニタリングを頻繁に行うならば,必要以上のコストを発生させてしまうかもしれない.一方,モニタリング・コストを節約しようとしてその頻度を少なくすれば,こんどは怠慢を誘発してしまうかもしれない.受託者が利己的な行動をとることを前提として,最小限のコストで怠慢を防止し,委託者に最大の期待効用をもたらすためには,どのような報酬体系(インセンティブ・システム)を設定し,モニタリングの頻度(モニタリング・システム)をどのように設定すればよいだろうか.</p><p>本研究では,この問題を定式化するためのモデルを提示し,モデルの解を求め,その挙動を分析してモニタリング・システムの性質を明らかにする.まず,受託者に資産制約がない場合に,受託者の怠慢に対して限りなく大きなペナルティーを課すことができるならば,モニタリングにコストがかかる場合でも,委託者は最善解に限りなく近い期待効用を得る可能性のあることを示す.つぎに受託者に資産制約がある場合でも,受託者に有限責任を保証する雇用契約を締結することが相互に有利になることを示す.そして最後に,情報システムの導入により業績が検証可能になる場合でも,情報システムの運用コストが無視できない限り,当該情報システムを用いずに努力のモニタリングによって動機付けを行うほうが有利になる場合が存在することを示す.</p>

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