O-2-B20 腎不全加療のため球形吸着炭を併用し、けいれん増悪を来した4p-症候群(Wolf-Hirschhorn症候群)の1例

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抄録

背景 4p-症候群(Wolf-Hirschhorn症候群)は4番染色体短腕の欠失を原因とする染色体異常症候群である。特異的顔貌を有し、出生前後の成長障害、精神運動発達遅滞、けいれんを4主徴とし、高率で腎不全などの腎泌尿器系疾患や摂食障害、先天性心疾患などを合併する。今回、腎不全加療のため球形吸着炭を併用し、けいれん増悪を来した症例を経験したので報告する。 症例 38歳男性。1歳時に4p-症候群と診断して以来当科フォローを継続している。症候性てんかんに対しフェノバルビタール(PB)およびニトラゼパム(NZP)内服で管理し、おおむねコントロール良好であった。また経年的に腎機能の悪化がみられており、Cre2.2~2.5mg/dl、BUN30~50mg/dL、と慢性腎不全の状態であり、高カリウム血症も伴っていた。そのためエナラプリルマレイン酸やポリスチレンスルホン酸の内服を継続していた。X年Y月15日慢性腎不全に対し、球形吸着炭(AST-120)の内服を開始した。他剤と同時服用をしていた。25日より入眠時のミオクロニー発作が多発するようになった。26日も同様の症状がつづき、睡眠がとれなくなったために当院受診、精査目的で入院とした。翌日も日中の発作が頻発しており抗てんかん薬の増量も検討されたが、直近で内服追加された球形吸着炭(AST-120)の関与を疑い、28日より投与中止した。翌29日より発作はみられなくなくなった。入院時採取した検体でPB24.6μg/mL、NZP0.043μg/mL(トラフ値)と平時より低い血中濃度であった。中止後に血中濃度の回復を認めことからも、球形吸着炭による抗てんかん薬吸収阻害と診断した。 考察 球形吸着炭は腎不全に対する透析の代替療法として有用であるが、他剤との同時服用を避ける必要がある。今回の症例は服薬タイミングの調節が必要であった。重症心身障害児者は多くの症例で内服薬を多用することとなるが、特に新たな薬剤を追加する際には各々の相互作用を再度確認することが必要である。

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