日本における公営プラネタリウム施設の立地と活用

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タイトル別名
  • Location and utilization of public planetarium facility in Japan

抄録

1,はじめに<br>プラネタリウムは半球状の壁面に星像を投影し天体運行を再現する道具であり,映像投映や音響の調整された没入感に富む空間である。<br>日本は,現在330館程のプラネタリウム施設が存在する世界的なプラネタリウム大国である。最初は戦前1930年代に東京と大阪に設置された。戦後1950年代に東京・大阪・名古屋などの大都市圏に設置が続く。1980年代から1990年代には,わが国の人口構成や経済状況に相乗し,各地方自治体所有の設置が相次いだ。2000年代に入るとプラネタリウム機器の技術変革が進展し,複数台のプロジェクタとコンピュータを用いて投映する「デジタル式プラネタリウム」が導入され,従来の機械光学投影機とのハイブリッド化が進んだ。2000年代から今日まで,既存施設では機器の老朽化に伴うリニューアルの実施が続き,新たなプラネタリウム施設も年数館開設されている。<br>2,研究目的<br>プラネタリウムの設置場所は,学校・教員研修施設・科学館のような理科教育の場だけではなく,博物館・公民館・市民センター・児童館・図書館・天文台を有する公共宿泊施設・商業複合施設など多岐にわたる。各地方自治体所有の施設は,所管先も教育委員会のみならず福祉課・産業振興課・市民生活課・総務課などが所管する。公営プラネタリウム施設は,教育・福祉・観光・市民文化・都市整備など多様な目的で設置され,目的実現の役割を担い運営が行われていると考えられる。そこで本研究は,日本全国のプラネタリウム施設立地の現況と,特に地域に設置されたプラネタリウム施設の活用実態を明らかにし,地域づくりへの効果を探ることを目的とする。本件では,全国におけるプラネタリウム施設立地の実態を報告する。<br>3,研究方法<br>各自治体のウェブサイトで公開中の組織(機構)図,指定管理実績一覧表,施設設置条例を検索収集し,地方自治体の組織内所管, 指定管理受注団体,設置目的を調査した。また,GISを用いプラネタリウム施設から最寄り鉄道駅までの道路距離の計測と,施設の立地場所の周辺状況を航空写真判読した。日本プラネタリウム協議会発行のデータブックを利用し,各機器メーカーの公表する納入実績,各施設館のウェブサイト情報から設置年・機種・改修年等を再調査した。これらを元に全国公営プラネタリウム施設の地理行列を作成し分析を行った。<br>4,結果<br>最寄り駅から800m(徒歩約10分)と2km(徒歩約25分)に施設立地のピークがみられた。判読から6つの立地特徴に分類した結果,1970~80年代開設は市民・児童福祉目的で都市公園内立地と住宅地内立地が,1980~90年代開設は市民文化目的で公共施設隣接立地が多い傾向にあり,特に1990年代は産業観光目的での山林立地開設が,2010年代は教育以外の目的で駅前立地の開設が比較的多い傾向がみられた。年代で立地の傾向がみられるのは,各時代背景から目的に沿った利用効果を期待して設置された表れと読み取ることができる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763120984832
  • NII論文ID
    130007628727
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_88
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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