シアル酸蛍光ナノプローブを用いた胃プロトンポンプのネガティブフィードバック機構の可視化

  • 藤井 拓人
    富山大学大学院 医学薬学研究部(薬学) 薬物生理学
  • 清水 貴浩
    富山大学大学院 医学薬学研究部(薬学) 薬物生理学
  • 久代 京一郎
    東京大学大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻
  • 竹島 浩
    京都大学大学院 薬学研究科 生体分子認識学分野
  • 高井 まどか
    東京大学大学院 工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻
  • 酒井 秀紀
    富山大学大学院 医学薬学研究部(薬学) 薬物生理学

書誌事項

タイトル別名
  • Negative regulation of gastric proton pump by desialylation suggested by fluorescent imaging with the sialic acid-specific nanoprobe
  • シアルサン ケイコウ ナノプローブ オ モチイタ イ プロトンポンプ ノ ネガティブフィードバック キコウ ノ カシカ

この論文をさがす

抄録

<p>胃酸分泌細胞において胃プロトンポンプ(H,K-ATPase)は,胃酸(HCl)のプロトン(H)分泌を担っており,逆流性食道炎や胃潰瘍など酸関連疾患の重要な創薬標的である.H,K-ATPaseは触媒鎖でイオン輸送機能を持つαサブユニット(αHK)と糖タンパク質で補助サブユニットのβサブユニット(βHK)のヘテロ二量体で形成されている.これまでβHKの糖鎖は,αHKの原形質膜へのトラフィッキングおよび機能発現に必須であることが報告されている.通常,糖鎖末端にはシアル酸が結合しており,免疫や細胞の分化など生理的に重要な役割を果たしている.最近我々は,生体適合性に優れたポリマーをベースとする蛍光ナノ粒子にレクチンを結合させた新規のシアル酸蛍光ナノプローブを用いて,βHK糖鎖末端のシアル酸修飾の動態を初めて捉えることに成功した.H,K-ATPase発現細胞,ラットの胃粘膜組織および初代培養胃酸分泌細胞のシアル酸イメージングにおいて,胃内pH環境によりβHK糖鎖のシアル化/脱シアル化が制御されており,酸分泌抑制薬による胃内pHの上昇によりβHKがシアル化されることが示唆された.また,βHKの脱シアル化処理により,αHKの酵素活性が減少することから,βHKのシアル酸修飾がαHKのポンプ機能を調節していることが示唆された.従って,H,K-ATPaseには自身のH分泌による胃内酸性化によりβHKが脱シアル化されαHKのポンプ機能が低下するというネガティブフィードバック機構が存在する可能性が明らかとなった.本プローブは,細胞外微小空間においてシアル酸が関与する様々な生理機能の可視化に応用可能であると考えられる.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 153 (6), 261-266, 2019

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (18)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ