亜ヒ酸製剤の分化誘導作用におけるアクアポリン-9の役割

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  • Role of aquaporin-9 in enhancing differentiation of leukemia cells by arsenite

抄録

<p>【目的】当研究室では、急性前骨髄球性白血病治療薬として認可されている亜ヒ酸製剤(As(III))と全トランスレチノイン酸(ATRA)との併用療法の有用性について基礎的な検討を進めている。その結果、ATRAとAs(III)の同時添加により、HL-60細胞の分化がより増強されること、その際に細胞内のヒ素濃度が顕著に上昇することを見出した。As(III)の細胞内への通過に、アクアポリン(AQP)ファミリーのなかでも、グリセロールを通過させるアクアグリセロポリンの関与が知られている。本研究では、(1)As(III)による分化増強作用におけるAQPの関与、(2)HL-60細胞の分化におけるグリセロールの役割、を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】細胞:HL-60細胞を使用した。分化:表面抗原CD11b発現量をFlow cytometryで検出した。mRNA量:realtime-qPCR法で測定した。siRNA導入:Electroporation法を用いた。</p><p>【結果および考察】 (1)ATRAを添加したHL-60細胞からRNAを回収し、AQP3, 7, 9のmRNA量を検討した。その結果、AQP9 mRNA量はcontrol細胞と比較して、ATRAにより上昇した。そこで、AQP9 siRNAを導入したHL-60細胞にATRA、ATRA + As(III)を添加後の分化を比較した。その結果、control siRNA処理した細胞では、ATRA + As(III)の添加によりATRA単独添加に比して分化が約2倍に増強していたが、AQP9 siRNA処理した細胞では、ATRA + As(III)による分化増強作用はほとんど検出されなかった。(2)AQP9はヒ素だけではなく、グリセロールも通過させることが知られている。そこで、HL-60細胞に血中グリセロール濃度を考慮した0.1, 0.2, 0.5 mM、さらに毒性を示さない10, 50, 100 mMのグリセロールを添加し、48時間後の細胞の分化を測定した。その結果、0.1~0.5 mMではグリセロールによる作用を検出できなかったが、100 mMでグリセロール単独で細胞の分化誘導が検出された。さらに、0.1 µM ATRAとグリセロールの同時添加によりATRA単独と比較し、細胞の分化が増強されることが明らかとなった。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763129608192
  • NII論文ID
    130007677375
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-199
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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