米からのカドミウムと無機ヒ素摂取をめぐる国内外の状況
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- 姫野 誠一郎
- 徳島文理大学薬学部衛生化学講座
書誌事項
- タイトル別名
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- Current problems regarding consumption of cadmium and inorganic arsenic from rice
抄録
<p>わが国において、米からの摂取する重金属としては、Cdが主たる問題であった。鉱山国であった日本では、イタイイタイ病が起きた富山県のみならず、多くの地域で鉱山廃水による土壌のCd汚染があり、Cd摂取による健康影響の評価、米へのCd蓄積の軽減対策が重要であった。一方、近年、国際的には米へのヒ素の蓄積とその影響が問題となっている。バングラデッシュなどのアジア各地において、地下水に高濃度の無機ヒ素が検出され、飲料水のみならず、灌漑用水を介して米がヒ素によって汚染されている。コーデックス委員会は、玄米の無機ヒ素濃度0.35 mg/kg、精米の無機ヒ素濃度を0.2 mg/kg以下とするよう勧告している。一方、植物生理学の最新の知見により、無機ヒ素はケイ酸を取り込む輸送体、CdはMnを取り込む輸送体を介して土壌から根に取り込まれることがわかってきた。ケイ酸もMnも米にとって重要な元素である。元来、米は無機ヒ素とCdを蓄積しやすい植物なのである。土壌学の成果は、米にCdが蓄積しにくくするための方策も生み出している。土壌からのCdイオンの溶出は嫌気的な条件で抑制されることから、収穫時期に水田に水を張る「湛水管理」により、我が国の米のCd濃度を大きく減少させることに成功している。しかし、土壌中の無機ヒ素は嫌気的条件で逆に溶出が促進されるため、湛水管理によって米に無機ヒ素が蓄積されないか懸念されている。本シンポジウムでは、バングラデッシュのヒ素汚染地で糖尿病や喘息が増加している実態に関する特別講演、我が国におけるCdと無機ヒ素の摂取実態、湛水管理を実施している秋田県におけるCdとヒ素の摂取状況、および、Cdを蓄積しない米の開発に関する最新の研究成果の報告を行っていただく。これらの報告により、米からのCdと無機ヒ素摂取の現状と問題点について認識を共有化し、将来への方策を考える議論の材料としたい。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 46.1 (0), S11-1-, 2019
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763129612928
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- NII論文ID
- 130007677515
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可