脳卒中片麻痺患者に対する部分免荷トレッドミル歩行練習がより効果的となる歩行様式の検討

押本 翔, 實 結樹, 小黒 修平, 松岡 正悟

doi:10.14900/cjpt.46s1.e-153_2

【はじめに・目的】脳卒中ガイドライン2015では、部分免荷トレッドミル歩行練習(Body Weight Supported Treadmill Training：以下、BWSTT)の有効性が述べられている。BWSTTの適応患者として、独歩もしくはT字杖使用にて監視レベル以上の患者であると言われている。実際の臨床では歩行が監視レベル以上の患者でも、歩行様式に違いがあることが多い。脳卒中片麻痺患者の杖歩行は3動作歩行から獲得されていき、麻痺やバランス機能の改善に伴い、2動作歩行に移行されていくと言われている。監視レベルであっても、3動作歩行や2動作歩行のように歩行様式が異なると、機能の違いにより、効果が異なる可能性がある。しかし、先行研究では歩行様式の違いによる効果は報告されていない。そこで本研究の目的は、BWSTTがより効果的となる歩行様式を検討することである。【方法】対象は当院回復期病棟入院中の介助なく歩行可能な脳卒中片麻痺患者10名(2動作歩行者6名、3動作歩行者4名、66.4±10.3歳)とした。評価は対象者に関する項目として、年齢、病型、麻痺側、発症後日数、下肢ブルンストロームステージ、Functional Independence Measureの移動の点数、歩行補助具の有無(無、杖、装具)、歩行様式(2動作、3動作)(揃え型、前型、後ろ型)を診療記録より後方視的に収集した。歩行パラメータとして、介入前後の10ｍ快適歩行速度・歩行率の利得とTrailing Limb Angle(以下、TLA)の利得を求めた。2動作歩行群、3動作歩行群の2群に分け、各基本情報・歩行パラメータをT検定、U検定にて比較した。統計ソフトはR.2.8.1を用いて有意水準は5%とした。BWSTT介入には、ハーネス式の免荷装置とトレッドミルを用いた。免荷率は10%とし、歩行速度は麻痺側下肢の振り出しが可能な最大速度で足部を介助し実施した。10m歩行速度の測定値は、2回実施した10m所用時間の平均値から求めた。なお、杖や短下肢装具など補助具を使用している場合にはそれらを使用した。TLAの測定は、市販のデジタルビデオカメラ(Nikon COOLPIX A100)を用いて撮影した動画の立脚後期を静止画変換し、その静止画を画像解析フリーソフトであるImage Jを使用し、角度を算出した。【結果】歩行パラメータの利得について、歩行速度は2動作群4.7±1.9m/min、3動作群0.1±0.5m/minで有意差を認めた(P<0.01)。歩行率、TLAの利得に有意差はなかった。また、その他の項目でも有意差はなかった。【考察】2動作群において歩行速度の向上がみられた。これは平地とトレッドミル上を歩く重心移動の軌跡が類似していたことが影響していると考えた。そのため支持基底面内に常に重心が存在する3動作歩行では、平地での速度向上が得られなかったことが示唆された。今回は足部介助で実施したため、立脚期から遊脚期への移行が円滑化し、振り出しが促通されたことが速度向上に影響したと考え、TLAや歩行率の上昇に伴う速度向上はしなかったと考えた。【倫理的配慮，説明と同意】当院の倫理委員会の承認を得て実施した。(承認番号549)

脳卒中片麻痺患者に対する部分免荷トレッドミル歩行練習がより効果的となる歩行様式の検討

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