独歩自立後に再度長下肢装具を使用し歩行速度及び歩容の改善が得られた左被殻出血患者

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抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p> 本症例は当院回復期リハ病棟入院から1カ月半後にコンサート鑑賞を希望しており,コンサート当日までに歩行自立獲得を目標に介入した.早期の歩行自立のために入院当初から随意的制御を要求していた為,独歩自立時の10m歩行速度は0.52m/sであり,改善の必要があった.歩行速度の改善と自動的制御機構の強化を目的に独歩自立以降に再度KAFOを使用し練習を充実させた,これらの取り組みにより歩行速度及び歩容の改善が得られた為,一連の経過を報告する.</p><p>【症例紹介】</p><p> 40代男性,発症前は独歩自立.左被殻出血と診断.血腫は内外側に進展,保存的加療となり発症から18日目に当院回復期リハ病棟に入院.</p><p> 入院時評価(発症~18日目)として,Brsは上肢Ⅰ手指Ⅰ下肢Ⅱ,感覚重度鈍麻,筋緊張はMAS 0,深部腱反射は麻痺側でやや亢進,病的反射も麻痺側で陽性,FACT 16点,FBS 8点,FACは0であった.</p><p>【経過】 第1にrehanoteを導入し1週間毎の目標を設定,共有した.第2にrehanote内の自主練習を理学療法実施前に導入しwarm-upとして理学療法の学習効率を高める工夫を行った.装具はKAFOを使用し,後方,側方介助を中心とした2動作前型歩行練習を実施.入院から1カ月半後のコンサート当日までに歩行自立獲得を目標に介入した.</p><p> 入院から1ヶ月半後(発症~65日目),Brs下肢Ⅳ,筋力はHHDで麻痺側股関節伸展筋0.14kgf/kgでAFOを用いて独歩自立,コンサートへ無事参加したものの10m歩行速度は0.52m/sと歩行自立度,歩行効率を追求するあまり,残存した機能を過度に使用した非対称的な歩容を認めた.</p><p> 歩行速度の改善と自動的制御機構の強化を目的に独歩自立以降に再度KAFOを使用し,麻痺側の荷重―非麻痺側下肢ステップまでの練習を歩行の前段階として導入した.これらの練習は手すり等の把持物を使用しながら行い,麻痺側立脚期での体重移動が行いやすい環境を設定した.</p><p> 退院時(発症~167日目)評価では,Brsは上肢Ⅲ~Ⅳ手指Ⅲ下肢Ⅳ,右側股関節伸展筋0.38kgf/kg,筋緊張はMASで右側下腿三頭筋が1+,FACT 20点,FBS 51点,FAC 5,10m歩行(AFO・独歩)は0.95m/s,6分間歩行は307mと改善が得られた.</p><p>【考察】</p><p> 回復期リハ病棟であるが故,身体機能の回復のみならず自己実現・家庭・社会復帰を目指す為,早期から自動的制御から随意的制御を要求することもある.本症例はコンサート鑑賞を一つの目標とし,これがリハビリに取り組む動機づけとなっていたため,早期から随意的制御を求めていた.結果,随意的制御機構を強く発揮していたため,これらに対して独歩自立時以降に再度KAFOを用いた練習を段階的に実施したことにより,再度自動的制御の強化に貢献できたと考える.</p><p> 脳卒中患者における歩行速度の問題は,参加制約に直結する重要な課題であり,既に独歩が自立した症例に対しても適切にKAFOを用いた歩行練習を行うことは歩行速度の改善に繋がる可能性があると考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は当院倫理委員会の承認を得たものであり,本人に文書で説明を行い同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-180_1-E-180_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134123392
  • NII論文ID
    130007693064
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-180_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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