くも膜下出血により除脳硬直を呈した一症例

書誌事項

タイトル別名
  • ~急性期の除脳硬直に対するアプローチ~

説明

<p>【はじめに・目的】</p><p> 脳卒中ガイドライン2015では、早期からのリハビリテーション(リハ)は強く勧められており、平成30年の診療報酬改定においても、特定集中治療室管理料等の見直しとして早期離床・リハ加算が新設され、集中治療領域における急性期重症患者に対するリハの重要性が示されつつある。今回、くも膜下出血(SAH)により当院High Care Unit(HCU)に入院となり、除脳硬直を呈した症例を担当した。神経生理学的背景をもとに考察・介入した結果、即時的な効果がみられ合併症の予防や早期離床に繋がったため報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p> 66歳男性。前交通動脈瘤破裂によるSAH(WFNS:gradeⅤ)で当院HCUに入院、経口挿管にて人工呼吸器管理となった。同日に脳槽ドレナージ術、発症3日目にclipping術が施行され、4日目から理学療法開始となった。GCS:E2.VT.M2。臥位姿勢は、除脳硬直肢位で、頸部左回旋位、肩甲骨は特に左側で外転が強かった。Modified Ashworth Scale(MAS)は右上下肢と左上肢で3-4、左下肢は4であった。自発呼吸は認めたが、唾液の垂れ込みによるバッキングを認めた。人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防のため、側臥位へ体位変換を行ったが除脳硬直により側臥位困難で、背臥位姿勢を強いられた。</p><p>【経過】</p><p> 理学療法として、頸部・肩甲帯のアライメントの調整、手内筋や足部から固有感覚入力を行い、筋緊張の調整を行った。その結果、即時的にMAS:2に変化を認め、他動的ROMも拡大したため側臥位が可能となった。6日目に人工呼吸器離脱、19日目に抜管し、VAPの発生はなかった。離床については、17日目に脳槽ドレーン抜去後、安静解除と同時にTilt up座位を開始、21日目に座位の許可があり同日下肢下垂での端座位を実施し、24日目に一般病棟へ退室した。</p><p>【考察】</p><p> 除脳硬直に対する理学療法は確立されていないが、本症例のHCUにおける課題は、関節拘縮を予防し、VAPの予防や抜管後の気道確保も考慮した体位管理、安静度に応じた速やかな離床を行う事であると考え、その阻害因子となる除脳硬直に対して考察し介入を行った。除脳硬直は、中脳尾側部あるいは橋の局所的損傷により、皮質脊髄路や皮質網様体路、赤核脊髄路が損傷した結果、姿勢制御に重要な前庭脊髄路や内側・外側網様体脊髄路の調節が困難となり、特に抗重力筋の筋緊張が亢進する状態とされる。また、緊張性頸反射との関連性も報告されている。本症例における頸部左回旋位と筋緊張が左側でより高い現象は、緊張性頸反射との関連性を推察し、頸部・肩甲帯のアライメントの修正を行った。加えて、固有感覚入力により脊髄小脳路を介して前庭脊髄路や網様体脊髄路の制御に作用するのではないかと考え介入を行った結果、即時的な変化がみられた。背臥位はVAPの危険因子であるため、側臥位をとれた事でVAP予防の一助となり、また安静度に応じた速やかな離床を行う事ができたため、本症例にとっての早期離床に繋がったのではないかと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に従い、症例に対して口頭にて説明し書面にて同意を得ている。なお、当院倫理委員会の承認(承認番号:HG-IRB1853)を得ている。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-212_1-E-212_1, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134128384
  • NII論文ID
    130007693057
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-212_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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