ホンダ歩行アシストによる脳性麻痺児の歩行時の筋シナジー数の変化
抄録
<p>【背景】</p><p>複雑な筋制御を効率的に行うために個々の筋に対して個別に制御するのではなく、同時に複数の筋をシナジーとして制御するとされる。歩行を制御する筋シナジー数は健常児と比較して、脳性麻痺児で少なく、このため複雑な筋活動の制御が難しいとされている。</p><p> ホンダ歩行アシスト(HWA)は骨盤と大腿部に装着することで歩行時の股関節の屈曲・伸展運動を制御することが可能であり歩行効率を高めることが出来ることが知られている。しかし、ロボットによって適切に歩行運動を変化させることにより筋制御に与える影響については明確ではない。本研究では、脳性麻痺児を対象に、HWAを使用して股関節の運動を補助することによって生じる筋シナジー数の変化を検討することとした。</p><p>【方法】</p><p>対象者は脳性麻痺児10名とした(年齢11.1±2.3歳、GMFCS Ⅰレベル 2名、Ⅱレベル 5名、Ⅲレベル 3名)。本研究におけるHWAは小児の身体に合うように調整した。まず初めに、快適歩行速度にて6mの平地歩行(平地条件)を2回行った。その後、トレッドミル上で両側の手すりを把持しながら、HWAを装着した状態でロボットによる補助を与えない30秒間の歩行(トレッドミル条件)を2回行った。次に数分間の休憩後、ロボットによる補助を与えた30秒間の歩行を10回行った(アシスト条件)。</p><p> 各歩行条件においてDelsys社製Trigno Wireless Systemを用いて歩行時の両側の大腿直筋、半腱様筋、前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋の筋活動を取得した。得られた10歩行周期の筋活動データから非負値行列因子分解(以下NNMF)によって両側の筋シナジー数を算出した。各条件の値は2試行のデータの平均を用いた。さらに、Xsens社製慣性センサを用いて両側の股関節角度を計測した。各条件のNNMFの結果から抽出されたシナジー数の変化をWilcoxonの順位和検定によって検討した。</p><p>【結果】</p><p>筋シナジー数は平地条件と比較してトレッドミル条件で有意な増加が見られ(p<0.05)、その増加はアシスト条件でも維持された。さらに、両側の歩行時における股関節運動範囲の結果から、股関節運動の大きな側のシナジー数と小さな側のシナジー数の差を調べたところ、トレッドミル条件と比較してアシスト条件において左右の差が有意に小さくなっていた(p<0.05)。</p><p>【結論】</p><p>本研究の結果より、安定したトレッドミル上の歩行において筋シナジー数が増加することが示された。さらに、HWAが脳性麻痺児の歩行時の股関節運動を適正化することで、筋シナジー数の対称性を向上させる可能性が示された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、本大学医の倫理委員会の承認を得て、各対象者に測定方法および研究目的を説明した後、書面にて同意を得て実施された。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), E-81_1-E-81_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763134135168
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- NII論文ID
- 130007693198
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可