高齢者における身体活動量と筋エコー輝度の加齢変化との関連
書誌事項
- タイトル別名
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- -4年間の縦断研究-
抄録
<p>【はじめに、目的】筋の超音波エコー輝度(以下,筋輝度)は筋内の脂肪・線維組織の程度を示す指標として近年注目されている。加齢により筋輝度が上昇することは多くの横断研究で報告されているが,筋輝度の加齢変化にはどのような因子が影響するかを縦断研究により調べた報告は見当たらない。筋量や筋組成に関連する重要な因子のひとつに身体活動量が知られている。本研究の目的は,高齢者を対象として,身体活動量が筋輝度の加齢変化に及ぼす影響を縦断研究により検討することである。</p><p>【方法】対象は地域在住で日常生活が自立している60歳以上の高齢者とした。2013年(ベースライン)および2017年(フォローアップ)に,超音波画像診断装置を用いて右下肢の大腿四頭筋の筋厚,筋輝度と同部位の皮下脂肪厚を計測し,右膝関節の最大伸展筋力を測定した。またベースライン時には,質問紙を用いて,身体活動量,糖尿病・変形性膝関節症(膝OA)の有無,飲酒習慣の有無,栄養状態も評価した。身体活動量は,1回30分以上のウォーキング・体操やスポーツを週に2回以上行っているかどうかで2群(高活動群,低活動群)に群分けした。栄養状態は食品摂取多様性スコア(Dietary Variety Score; DVS)を用いて評価した。ベースラインとフォローアップのBMI,脂肪厚,筋厚,筋輝度および筋力を,対応のあるt検定を用いて比較した。また,BMI,脂肪厚,筋厚,筋輝度および筋力の4年間の変化量を算出し,各変化量を目的変数とした重回帰分析を行った。説明変数は,身体活動量(高活動または低活動),年齢,性別,BMI,飲酒,DVS,糖尿病,膝OA,および各目的変数のベースラインの値とした。さらに,筋厚・筋輝度の変化量と筋力の変化量との偏相関を,年齢,性別,BMIで調整したうえで検討した。</p><p>【結果】対象は,131名(平均年齢72.9歳,男性33名,女性98名)であった。4年間で,高活動群・低活動群とも筋厚,脂肪厚と筋力が有意に減少し(P < 0.05),高活動群では筋輝度が有意に低下したが(P < 0.05),両群のBMIと低活動群の筋輝度には有意な変化がなかった。重回帰分析の結果,高活動は筋厚(β= 0.189, P = 0.031)および筋輝度(β= -3.145, P = 0.045)の変化量に他の説明変数から独立して影響していたが,BMI,脂肪厚と筋力の変化量には影響していなかった。偏相関分析の結果,筋厚・筋輝度の変化量は筋力の変化量には関連していなかった。</p><p>【考察】本研究の結果,高齢者の身体活動量は筋輝度の縦断変化に影響し,高活動は筋輝度の低下すなわち筋内脂肪・線維組織の減少を引き起こすことが明らかとなった。また低活動であっても高齢期の4年間では筋輝度の上昇は認めにくいことが示唆された。さらに,筋厚および筋輝度と筋力との縦断的な関連性は強くはないことが示唆された。</p><p>【結論】高齢者における高い身体活動量は筋輝度の縦断的な低下を引き起こすことが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,測定機関の倫理委員会の承認を得て実施された。対象者には事前に研究内容を説明し,書面にて研究に参加する同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), I-48_1-I-48_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763134228736
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- NII論文ID
- 130007694264
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可