胸髄レベル二分脊椎症患児の理学療法

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抄録

<p>【はじめに】脊髄運動最下髄節胸椎レベル(以下、Thレベル)の二分脊椎症患者はSharrard分類においてⅠ群に分類され、移動手段は実用歩行困難であり車椅子が必要である。しかし小山らはすべての障害レベルで早期から立位練習を開始することが抗重力筋の強化と骨成長を促すという意味で非常に重要であると述べている。当院では下肢の骨成長や抗重力筋強化、知的発達促進を目的に、Thレベルの患児においても立位獲得時期から体幹装具付き長下肢装具(以下、KAFO)を作成し、立位、歩行練習を実施している。今回クラッチ立位、歩行を獲得したThレベルの二分脊椎症患児について報告する。</p><p>【方法】症例は5歳9ヶ月時に当院初来院したThレベルの女児である。初診時にKAFOの膝関節をロックした状態でつかまり立ちが可能であった。屋内移動はいざり、屋外移動は車椅子を使用しており、移乗や歩行は未経験であった。本児や両親からクラッチ立位で七五三やランドセルを背負う写真が撮りたい、クラッチ歩行で卒業証書をもらいたいという希望があり、当院でKAFOを作成し、平行棒やPosture Control Walker、クラッチ立位、歩行練習に加えて上肢、体幹筋力増強運動のためPush up練習を実施した。</p><p>【結果】クラッチでの立位保持が可能となり、クラッチ歩行では10mの移動が可能となった。また10cm差のある車椅子-プラットホーム間の移乗も可能となり念願のランドセルを背負った写真を撮ることができた。</p><p>【結論】北泊によるとThレベルの目標設定として移動には車椅子とクラッチ歩行を併用する必要があり、Mazurの研究では歩行を目指した理学療法を行うことで、車椅子使用開始後に移乗の自立の割合、公共交通機関や自動車等による移動の選択肢が広がり、骨折回数や褥瘡の発生率が減少すると報告されている。またWilliamsらが多数例の移動能力の経時的変化を調査した報告では、胸髄から上位腰髄レベルの麻痺では5歳までに歩行を獲得することができても、7歳前後に歩行を中止することが多いとしている。これには成長に伴う骨変形などの合併症や肥満、就学に伴う理学療法の頻度の減少などが挙げられ、本症例に対してもホームプログラム指導や理学療法プログラムを展開していく必要があると考える。Thレベルの移動は車椅子の使用が実用的であるが、今回本児や両親の希望もあり、体幹装具付きKAFOやクラッチ使用にて立位、歩行を獲得した。将来的に骨折などの合併症を予防し生活の自立を目指すため、また本児や家族の目標を達成するためThレベルの二分脊椎症患者においても車椅子操作のみならず立位、歩行練習を理学療法プログラムに取り入れる意義があると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】個人が特定できないように十分な倫理的配慮を行い、また本人とその家族には内容と意義について十分に説明し、同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-52_2-J-52_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134235008
  • NII論文ID
    130007694332
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-52_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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